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夏に雪
DOLL'S DOLL
元々化粧品に疎い私が化粧品を探しても、似合う物や使いたい物が有るかは分からなかったが、手に取り眺めて歩いているだけでも楽しめた。ハルのように念入りには探せなかったが、色違いの化粧品達は存在を私に主張していた。
手に取った化粧品を戻そうとした拍子に、隣の商品を倒してしまった。いけない、と慌てて元の位置に戻せば、私はその化粧品と目が合った。

…可愛い。
すいと手に取って、それを眺める。細身の瓶には模様が掘り出されるように浮き出し、中身の液体も瓶の色を反映し薄くピンク色に見える。上の蓋を外せば其れは香水で、付ける前から漂う芳香に私はうっとりした。
ぼんやり香りに包まれて居れば、なっちゃんは良いのあった?とハルに声を掛けられた。振り向いて、うん、これが可愛いなと思ってと言えば、ドールズドールだ、と言われた。

「ドールズドール?」

「そう!可愛いよね〜」

良く見れば確かに『DOLL'S DOLL』と書いてある。初めて惹かれた香りと名前は、私にくっきりと焼き付いた。
ハルに、香水付けてみれば?と促され、私はええっ!?と無駄に焦りながら恐る恐る香水を手首に吹きかけた。さっきより甘い香りが広がって、私は手首を顔の前に出しながら香りを満喫した。

「好きなの見つかって良かったねなっちゃん!DOLL'S DOLLは化粧品展開もしてるから、色々試して見てね!」

にこっ、と笑まれながらハルにお薦めされ、私は何だか化粧品売り場の店員さんみたいだねと返した。ハルはえー!?そんな事ないよぉと返してきたので続けなかったが、化粧の仕方も知識も含め、化粧品がハル自体に似合うような感じがした。

香水買わないの?と言われたが取り敢えず下見だけ、と返し、ハルにもお目当ての物は結局見つからず、私達はデパートを後にした。
変わらずハルの化粧品知識や格好いい先生居るかななど女の子らしい話をハルは繰り広げ、私はそれにただただ相槌を打った。先生に初恋しちゃったらどうしよう、叶うのかな!?と話題が出、ねえねえなっちゃんの初恋は?とハルが大きい瞳を輝かせながら訊いた。正直この話題は嫌いなのだ。私はんー…と考えるフリをしながらあっハンバーガー屋だ、今度帰り食べようねと話題を無理矢理逸らした。ハルは一瞬顔を曇らせたがすぐに今度食べようねぇ!と言ってくれた。本当に食べたいのか私に合わせてくれたのか知らないが、お喋りを再開したハルを見て、私は安堵した。

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