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夏に雪
女の子Bと男の子A

「それで?どうしてナツ姫は浮かないお顔なのかな」

追加で買ったドリンクをストローでかき回しながら、ユキは質問した。ユキは良く名前の後に姫を付ける呼び方をする。私は噛み途中のクレープを飲み込みながら会話を繋げた。

「んー…いやー…えっと…何て言うか…略して言うと、八つ当たりされたって言うか…」

誰に?とドリンクを飲みながらユキは訊く。誰にとはまた言い難い。それは近い知り合いなだけに、私は何と言うべきか頭を巡らせた。

「誰にと言うか、何だろう、男の子A君が居て、女の子BちゃんはそのA君に想いを寄せてて、私はA君とは仲良いだけで、好きとか付き合ってるとかじゃないんだけど、そう見えると言うか確信しちゃった事がBちゃんにはあって、それがBちゃんには気に喰わないみたいで、あんたはなんだかんだ、私のが好きなんだからなんだで…」

私の言葉はそこで消極的に消えた。思い出して、力尽きたのだ。理不尽なぶつけられ方とは言わないが、言葉にしながら自分の中で整頓してみても傷付いた自分が居るだけで、釈然としない思いは変わらず私に居座った儘だった。俯いて溜め息混じりにドリンクを啜った私にユキは、女の子って理不尽なんだよね、夫婦喧嘩みたいと適当にクレープをかじった。
まぁそれが本当なら大分楽なのだがと私は思った。今思い出しても、あのアキの表情は上辺では無いと思える。クレープで甘くなった口にシロップを入れて苦味を消したアイスコーヒーを流し込む。

「それでも、ナツにそんな仲良い男子なんて居たっけ?中本とは良く話してたりするけど、あいつ、そんなにモテそうにも無いけどなぁ」

実はそうでもないのかなとユキはクレープを食べながら考え込んだ。私はと言えば、本当に男子に考えが及ぶユキに落ち込みつつ安堵しつつと、複雑な心持ちだった。まさか女の子Bがアキだとはとても言えない。私は最早甘いだけが売りと化したようなコーヒーを啜り、まぁそれはそれで何だけどさと口を付いた。

「恋とか、誰かを好きになるとかって、ユキは範囲定めてるタイプ?」

ユキは一瞬私を見た後、クリームの褪せかけたカプチーノを一口飲むと、それって、どう言う区切り?と言葉を返した。

「今多いじゃん。二次元が好きとか芸能人が好きとか物が好きとか。恋とか愛を向ける範囲って人それぞれで、個人差が有るから、その…喩えば、男の子が好きとか、…女の子が好きとか」

そこまで言って、私は思い切りユキの顔を見詰めてしまった。

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あきゅろす。
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