夏に雪
アキの態度
朝目が醒めた時、既にハルは支度を整え終え、リビングで朝食を食べていた。寝起きの儘部屋のドアを開けハルに気が付けば、なっちゃん遅い!と指摘され、ハルはけらけらと笑った。
「……ハル早くない…?」
勝手な思い込みだが、ハルは朝が弱そうなタイプだと思っていた。化粧まで整えてご飯を口にするハルに私は自分の寝間着姿を見ながらだらしなさと覚えた。真知子も早く支度しなさいと母親に急かされ、私は慌ただしく制服に着替え朝食を取った。
玄関先でお弁当を渡される。今日のお弁当ねぇ、卵焼きが入ってるんだよぉとハルが満面の笑みで言う。ほら、早く行こと手を掴まれて先導される。ほらほら、早く、と急かすハルに私は昨日の事を忘れ掛けながら家を出た。
学校に着き、半分以上働かない頭の儘授業は続く。机に伏せて寝ようにも寝られず、辺りを見回す。6月に近付き5月の風は厭にべたつく。それでも視線を向けた先の黒髪は綺麗に靡いていた。
お昼休みに広げたお弁当は皆の目を引いた。何せ、私のハルのお弁当が同じ中身なのだから仕様は無いかと思ったが、どこかしら強いアキの視線には少し怖さを感じた。
「どうしたの?二人同じお弁当じゃん」
ユキがパックの飲み物を飲みながら指摘する。私は少しドキリとしたが、ハルが変わらずのテンションで応対してくれた。
「昨日なっちゃんのお家に泊まってね、おばさんがお弁当作ってくれたの!すごい美味しい」
へー、そうなんだ、確かにナツのお弁当の中身だよねとユキは言った。ユキはそれ程気に掛けては居なかったようだが、どうしても強い視線は消えなかった。
「…アキ、どうしたの…?何か怖いよ」
何かあったの?と私はおどおどと尋ねた。だが、あからさまに機嫌の悪いアキは冷たく別に、何でも無いよと言うだけだった。私が深追いしようとすれば塾でテストの点が悪かっただけ、と区切られ、お昼休みは不穏な空気を醸した儘終わった。
午後の授業を終え、私が鞄に荷物を詰め美術室へ向かおうとしていた時、ちかりと携帯が光った。携帯を開けばメールを受信していたようで、確認すれば差出人はアキだった。話したい事が有るから来て欲しい、上の階の廊下で待ってるからと書かれたメールに私は今から行くと返信し鞄を持ってそこに向かった。何だろう、さっきの冷たい態度に対して謝りでもしてくれるのだろうかと、私は深く何も考えず教室を出た。まさかそこで私はまた何かを知ろうとは、思っても居なかった。
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