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夏に雪
割れる風船

「私が初恋て…あ、…ハル、本気なの?」

私はあからさまに動揺した態度と声で言った。ハルは首を左右に傾げながら答える。

「電車の中と入学式らへんではそうじゃなかったかも。気になるから仲良くしたいなってくらいで。でも今日の事で、それが加速したのは確か。こうやって、誰かに本気で向き合って貰った事って無いの…だからだと思うな…なっちゃんは、私の初めての恋の相手だよ」

そ、うなんだ…と私はハルの方を向けない儘答えた。いつもの口調とは違う少し落とした声色もハルの言葉に信憑性を与えていて、私は更にどうしたら良いか分からなくなっていた。
ハルは私に全部伝えて楽になったのか、腕を伸ばしながら遅いからもう寝ようかぁ、眠くなっちゃったなぁと言った。ちらりと時計に目をやればうっすらと時間が目に映る。ハルの言う通りそろそろ眠らないと明日に響く時間帯だ。だが、こんな唐突な発言をされて眠れるものだろうか。私は頭の痛みを感じた。
ハルは私に背を向け横になりながら、なっちゃん、気にしないでいいよと呟いた。

「気、気にしないでって、」

「好きになって欲しいとかじゃないから、無理矢理私に返事を考えたりとか、私に変に距離を取ったりしないで、今の儘で居て。なっちゃんが居れば、それでいいの…」

言葉に詰まる私に、ハルはじゃあまた明日、おやすみと告げてうずくまった。呆然と置いていかれた私はどうする事も出来ず、ばさりと毛布を被り直した。目を瞑っても眠気は訪れず、ハルの言葉ばかりが脳裏に浮かぶ。閉じた目蓋を開けて、ハルの言葉を考える。初恋とは何だろうと思う。ハルの初恋は私に打ち明けた事で終わってしまったのだろうか。初恋とは、体験したその瞬間に始まりその瞬間に終わって終うものなのだろうか。

風船を思い浮かべた。淡い思いを入れた風船はふわふわと柔らかく空を上がり、舞っている。そこからもっと空を目指し上昇していく。だが、飛び交う冷たい言葉の烏につつかれて割れてしまう。思いは抜けて、風船は割れてしまう。初恋は、終わってしまう。ハルの初恋は終わった。だけど、私の初恋は…?
私は、ぎゅっと毛布を握った。私は初恋を見付けたら、頑張らなければならない気がした。烏として割ってしまった、ハルの思いの分まで。
ぐだぐだと頭を巡らせて居れば一日の疲れは次第に身体を支配し出し、私はうとうとと枕にしなだれ掛かった。絡まった頭を一度綺麗に整頓し直す為にも、脳は睡眠を選択した。

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あきゅろす。
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