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夏に雪
明かされた名前

ガールズトークかぁ、と言いながら私はまた一方的にハルの恋話を聴かされるのだと思っていた。だが、くつくつ笑いながらハルが口にした言葉は考えの真逆で私は驚いた。

「なっちゃんの初恋は?」

「えっ?私の?」

私は目を見開くように驚きを露わにした。えー、そんなに内緒にしないでよ、とハルはきゃっきゃと笑った。ハルには私の態度が恥ずかしさからの動揺に思えたらしい、それならそれで構わないが、私は引かない驚きの儘言葉を続けた。

「私の初恋は絵だったよ。凄い印象に残ってる」

「どんな絵?」

「風景画だったかなー…花火の絵だったと思う。花火も綺麗だったんだけど、それが浮かぶ空の描き方が凄い上手だったんだ」

空の描き方?とハルは顔を傾げた。花火が綺麗なんじゃないのと言われたが、私には何故なのか、花火が浮かぶ空の方が綺麗に思えたのだ。描いた人物は空にとても思い入れがあるような…そんな感覚に私は捕らわれたのだ。
ハルに説明したが曖昧に頷くだけで、余り理解は得られなかったようだった。新たな話題をハルは切り出した。

「その人の名前分からないの?なっちゃん」

「名前?うーん、確かねえ、はや…はやさかだったかな?早坂だったような気がする」

余りに絵が綺麗でその時私はすぐに描き手の名前を見たのだ。確か、早坂だったような気がする。ふーん、早坂さんかぁ、同級生には居ないよね、とハルは言った。確かに私がその絵を見たのは小学校で、その描いた絵の子と同級生だったから同じ中学に進学し、またこの高校にと、そうなって居てもおかしくは無いが、確率としては低過ぎる。それにさ、と若干貶し気味に私は続けた。

「小学生でそんな上手い子って居ないじゃん。大体親に手伝って貰ってるとかさぁ。あの絵も、そんなんだったと思うんだよね」

だから、私の初恋は間が抜けていて、絵と言った時点で足揚げとりされるのも有り話すのが嫌なのだ。そう言えば、そうだったんだね、とハルは応じた。
私は自分の経験を貶し気味に紹介した後、目の前のハルの初恋が気になった。見た目は可愛いし、性格は多少一方通行だが異性には可愛く映るだろう。なっちゃんの初恋って何だか不思議だけど半端だね、面白い、と笑うハルに、私はハルの初恋はどんなのだったの?と興味津々に目を輝かせながら尋ねた。少なくとも私よりはドキドキして、楽しくて切なくて、キュンと胸が締め付けられるものだと思ったからだ。ハルは若干えー、と照れくさそうにしながら話し始めた。

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