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夏に雪
入学式

ホームから階段を下りて、ざわざわとする改札を抜ける。駅を出れば視界は開け、デパートやらビルやらが建ち並ぶ。激しく都会と言う訳では無いが、高校帰りの生徒が寄りたい様なお店が並んでいて、遅れないよう足早に歩きながら私はそれを楽しんだ。



学校に到着し、校門をくぐる。その前で写真を撮る生徒を何人か見掛ける。さわさわと揺れる桜が、背景を染める。周りの動きに沿うように、私は連なって歩き、入学式が行われる体育館に向かった。パイプ椅子が整然と並べられ、順番にその椅子に腰掛ける。数十分経ってから入学式は行われ、定番化した先生方のお偉い話に私は眠気に誘われた。

一時間強の式が終われば、説明された通りにクラス分けがされた張り紙に人は群がり、先生毎に生徒は振り分けられ、教室に連れられて行った。ぞろぞろと笛吹きの童話宜しく人が消えてゆく様は分かって居ても何故か不気味だった。

そうして居る内に私のクラスにも収集が掛けられ同じく連れられていく。どんな担任なのか、どんなクラスメイトなのか、正に収容される何かのように、心はだらだらと怠惰に駆られていた。

収集されている間に既に明るい会話は上がったりしている。同じ中学からだの、入学式中のお喋りで趣味が通じただのだろう。担任の緩い怒声が響いた後で、私達は教室へ向かった。

初めは出席番号順に座るものだが、初日くらいは自由にしろ、と優しいのか手抜きなのか判らぬ担任の心遣いに生徒はそれはバラバラに着席した。私は名字の関係上いつも前の席なので、後ろの方に着席した。後ろからぼんやりと周りを見渡せば、皆どこかしら賑やかな雰囲気を持っていて、私はどことなく詰まらなさを感じた。

全員が着席したのを見計らって、担任が声を掛ける。取り敢えず今日は書類とプリントを配り、軽い自己紹介をして終了だそうだ。前から回って来るプリントを後ろに回し、右側の着席順から自己紹介は始まってゆく。

矢張り恥ずかしさが勝るのか、皆小声で説明も手短だった。徐々に順番が自分に迫り、鼓動が高鳴り手汗が滲み出していた頃、急にねえねえ、と私は後ろから声を掛けられた。びくっ、としながらも若干振り向けば、そこには駅のキヨスクで視界の端に見掛けた茶髪の女の子が居た。

「…あ、」

振り向き様にあ、は無いだろうと思ったが緊張し過ぎで声が繋がらなかった。女の子はくすりと笑いもせず私をまじまじと見詰め、たじろぐ私を気にもせず、やっぱり!と声を出した。

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