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夏に雪
未遂

その日、私は中々眠れなかった。胸に浮かんだ疑惑や疑いは朝まで晴れる事無く、半分寝たような一晩中ぼんやりと起きて居たような感覚を覚えつつ、私は支度をし、学校へ向かった。


学校へ着いて、昨日と変わらず会うハルにも違いは見られず、変わらない明るい声と笑顔に私は癒された。ナツ顔色悪いね、大丈夫?と心配され、私は昨日テレビ視てたら遅くなっちゃって、大丈夫と笑った。
授業が終わって迎えるお昼休みも、いつもと変わりなく始まる四人の会話もつつがなく終わり、次何だっけ、5月はたるいなぁとユキが欠伸をした。アキは会話に参加しながら教科書を捲っている。ハルは楽しそうに笑っている。

そうだ、これで善いんだ。
安らいだ不安を深く胸に押し込み、午後の授業は開始された。




授業は終わり、賑やかなクラスの会話が盛り上がる中、じゃあ部活だからバイバイと私は教室を抜けた。今日は香水を買う為部活は早めに切り上げるつもりだった。部室に入り少しだけ籠もった後、珍しいね早帰りなんだと若干同級生に驚かれながら私は部室を出た。


その儘学校を出て帰路に着き、駅前をぶらついて香水を探すつもりだった。しかし地元のドラッグストアよりは品揃えの豊富そうな店舗を見ても香水は無く、店員に声を掛けても素っ気無く品切れ中ですと返され、二店舗回ってみても買えなかった私は諦めながら駅に戻るように歩いていた。二つ目の店舗が駅から遠い所為も有り、売っていなかった落ち込みも合って足は重かった。駅前にはまだ遠かったが、ふと前を良く見ると小さいがドラッグストアが合った。大通りからは少し外れて入り組んで人目に付きにくいような店舗だった。だが、無いよりは有る方がマシだ。私は諦めと期待を抱きながらその店に向かった。

店に向かって歩いて居れば、店先で足を止める女子高生が居た。化粧品を手に取り、品定めするように長く眺めている。でもそれは周りの人物を気にし、何かのタイミングを窺って居るようにも見える。私は信じたくなかった。しっかり顔が見えないからと自分を疑いたかった。それでも今日会ったばかりの彼女の髪型を忘れられる筈も無く私は徐々に彼女に間隔を詰めていく。店員が彼女の側を通過し掛ける。彼女の手は音も無く薄く開いた鞄に差し込まれようとしている。私は適当な名を大声で叫んだ。周りの人が私を見た。彼女は驚いて化粧品を落とした。声に驚いた店員が慌てて店の外に飛び出して来た。私はハルの腕を掴み、今まで出した事の無いようなスピードで走り出した。

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