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夏に雪
ときめきの放課後

「アキは冷たいなー」

おぼろを飲み込みながら、私はハルにおちゃらけて同意を求めた。コンビニ弁当を選り好みして摘むハルはんー?別にぃー、とか言いながら私をあしらった。
理由は分かって居るのだが、ちょっとした自己中心な面が何となく分かって嫌だった。横から、ご機嫌直してよ、ヒメサマと言いながらユキが自分のお弁当から卵焼きを箸で持ってハルの口に運ぶ。ぱくりと食べたハルから出た言葉はアキちゃん、冷たいなぁ!とか言う暢気な言葉だった。アキは若干面食らいながら、ユキは卵焼きひとつで機嫌を直すハルにくつくつと顔を背けて笑っていた。

「ほんとハルって面白いなぁ。卵焼きで機嫌直るって」

「そ、そんなんじゃないよぉ、ユキちゃんの卵焼きが美味しいから」

「ナツナツ、今度からハル用に卵焼き持ってきな、すぐ機嫌良くなるよ」

「そうだね、ハルっていつも卵焼き入ってるコンビニ弁当買うし、入ってないと怒るしね。有り難うユキ、参考にするよ」

いえいえ、と笑いながら手を振るユキに私は釣られて笑った。ハルは自分が卵焼きさえ有れば物足りるキャラだとされた事が照れくさいのか、必死にその場を払拭しようとしていた。

「もうぉーみんなヒドいよー!アキちゃーん、味方してぇ」

ぎゅう、とハルはアキの腕を掴みながらその背に隠れるようにうずくまり、陰から小さく舌を出すようにして笑っていた。小悪魔のような可愛らしい仕草に怒る気力は失せ、アキが私とユキを宥めるようにまあまあ、と言いながら場を納めた。

それにしても、初めて会った時からと比べるとアキは本当に人なつっこくなったと思う。出席番号の席順で近くになったと言う事も有るが、アキの私に対する蟠りはハルと初対面から仲良くしていた事だったらしく、詳細を説明してからは、ふーん、あんたも大変なのねと納得して貰え、仲の良さに発展したと思っている。初めて会った時にしろ今にしろ、アキはハルには特に甘やかすように優しい。ハルもそれを解っていて懐いて居るようだが、二人の間に何となく感じる噛み合わないような感情の不和は、この時は見てみぬフリをしていた。

お昼休みは終わり、午後の授業が始まる。気怠くて気難しい内容の授業が終われば、半分自由行動のような明るい部活動が待っている。
私は大まかに鞄の中身を整頓するといち早く教室を出た。ハルに、ナツ、もう行っちゃうの!?と言われたが、やりたい事があるから!と私は廊下を駆け出した。

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