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夏に雪
入部の理由

その儘、4月は順調に過ぎ、私達は新入生らしく部活動に所属し、四人で賑やかにお弁当を食べたり放課後を持て余しながら仲を深め、直に病がちになると言う5月を迎えていた。

ハルとアキは帰宅部、ユキは吹奏楽部、私は美術部だった。
アキは行きたい志望校の為に塾に通うため、ハルはやりたい事が無く帰宅部、ユキは楽器をいじりたいと言う理由から吹奏楽部、私は少しでも絵が上手くなりたいと言う理由で美術部だった。
ホームまで帰り道が一緒なハルには一緒に帰れないのが嫌だなどと言われたのだが、私にはどうしてもやりたい事だったので、愚図るハルを宥めすかして、半ば強引に私は美術部へ入部したのだった。

私の美術部への入部は、何故か皆から不思議がられた。ナツは何か運動部っぽいのに何故?と言った理由が疑問の種だったらしい。和やかなお昼時間の興味は私の何故美術部なのかに向いた。

「何でって…理由とか無いけどさ」

親の作ったお弁当を摘みながら喋る。アキはふーん、とか言いながらお弁当を口に運んでいる。ユキは、でもナツが美術部って何か意外だよね、何でなの?と訊いてきた。何となく、一番私の美術部入りを気にしていたのはユキだったかもしれない。一緒に帰れないのにとむくれるハルを置いて、投げかけられるユキの質問に、私はそんなに対した事じゃないけどさと具を飲み込みながら言った。

「初恋が美術だったんだよね」

若干俯きながら口にしたその台詞に、アキは飲んでいたペットボトルの中身を吹き掛けていた。

「ナツ、初恋が美術て何なの?」

「えー?飾られてた絵が素敵過ぎて惚れたの。小学生の頃だったから、その絵が初恋かなって」

あんたって、何かずれてるよねと、アキは冷めた目でペットボトルを飲み直しながら私を見た。

「大体初恋て、うちらぐらいの年齢から発露するの限定でしょ。それか先生とか同学年とかさ。あんたの感覚って有り得ない」

さらさらと貶しを言い終えて、アキはお弁当の具を口にした。一番食い付いていたユキは特に反応も無く、まぁそう言うときめきもあるよねと話を終わらせた。
喋った私は何だったんだと思いながら私はおぼろの掛かったご飯を食べた。ピンク色の甘いおぼろは初恋の色と味なような気がした。

「おぼろって、初恋の味かもしんない」

「…本当にあんた変わってるよ」

おぼろを摘みながら、天才的に閃いた顔をしていた私にアキは呆れながらとどめを刺した。

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