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ブルー・デュール
桜 常 編

13

 放課後、おれはひとり会議室に入った。
 今日は曇天なのに電気がついておらず薄暗い。
 四角く並べられた長机の周りに、数人の上級生が座ったり腕組みしたりしている。

「戸上、なんで呼ばれたかわかってるよな」

 真ん中のひとりが言った。

「なんとなくなら。今どき下駄箱に手紙なんて古風な呼び出しかたですね、先輩」
「思った通り生意気だな」

 小柄だがリーダー格らしき生徒が目で合図すると、図体はでかいがおつむは軽そうなふたりが
前後のドアに鍵をかけた。
 いよいよ緊迫したムードになる。
 リーダー格以外の生徒が全員体育会系なのはそういう意味だろう。
 おれは生徒会に近づいた罰を受けるのだ。

「お前勝手なことしすぎなんだよ。ちょっとここのシステム理解したほうがいい。俺たちが手伝ってやるよ」
「それはどうも」

 四人の生徒が机をまわりこんで近づいてきた。

「顔は傷つけちゃだめだからな。見えないところにしろよ」
「わかってるっつの」

 見るからにひ弱そうなリーダー格の生徒は、高見の見物を決めこむつもりらしい。
 おれはブレザーを脱いで椅子の上に置いた。

「なんで脱ぐんだよ」
「だって邪魔だろ。汚れたら嫌だし」
「ふーん、意外とよくわかってるじゃんか。おとなしくしてれば痛くはしないよ」

 そんなわけあるか。
 痛い目を見せるためにこれだけ人数集めたんだろうに。

 おれはシャツのボタンを三つ外して軽く肩をまわした。
 四人はおれを取り囲み、まず右腕をつかんできた。
 そのまま壁に縫いつけられ、おれは腹に力をこめて待った。
 だが予想は外れ、腹を殴られはしなかった。
 かわりに首をつかんで固定され、顎から耳までをなぞるようになめられた。

「ぎゃあああっ!?」

 気がつくとその生徒は派手に吹っ飛んで、長机に頭を強打して昏倒していた。
 最初の一撃は奴らにやらせようと思ったのに、予想外すぎて足が先に動いてしまった。
 全身に鳥肌が立った。
 ずいぶん唾液を含んでなめられたようで、頬がべとべとしている。
 吐きそう。

 おれは必死に袖で頬をぬぐった。
 残った三人がおれの反撃に目を見張っている。

「なんだよお前、抵抗しないんじゃなかったのかよ」
「そんなこと言ってねえ!」

 こうなったらやるしかない。
 おれは握りこぶしを作って三人に殴りかかった。
 さっきのおれの蹴りを見た三人は警戒して本気でかかってきた。
 だが全然ぬるい。
 腕が上がっていて脇ががら空きだし、数に頼っているせいか危機感が薄すぎる。



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