サビイロ契約
3
「やっ、やめろっ」
「あ？ 俺に指図できる状況か？ これ」
男はいったん口に含んで唾液を絡ませた指で、後ろの窄まりをくるりとなで、無理やり中に押し入った。
異物感と気持ち悪さに珂月は顔をしかめた。
「違うな、そんな顔じゃなくて」
指を付け根まで入れて中をほぐしながら、男が不満そうな声をあげた。
珂月は強く歯を噛みしめて男を睨む。
「強気な顔もいいけどさ、もっと……」
「っあ!?」
指が内部の一点をこすると、珂月は足をびくりと揺らした。
珂月の表情が変わったのを見て、男は何度もそこばかりをこすった。
そのたびに珂月は体をびくびくと跳ねさせた。
「そうそう、それ。いい顔」
「あう……あっ、んっ」
指は二本に増え、濡れた音を立てながら中を行き来する。
珂月の中心は触られてもいないのに芯を持ち始めていた。
珂月の紙のように白かった頬に、朱が混じっていく。
「ああっんっ……やっ、やめっ……」
初めての感覚に珂月は成すすべがなかった。
喘ぎ声の合間にただやめろとくり返した。
男は抜き差しするスピードをじょじょに早め、比例して珂月の声が高くなっていった。
だが男はいいところで指を抜いてしまった。
突然快感を取り上げられた珂月は、むずがゆさに腰をくねらせた。
男は珂月の両足を胸につくまで折り曲げ、腰を密着させた。
熱く硬いものを秘部に押しあてられ、珂月は息をのんだ。
狭い中に男のものが突き立てられた。
強引に引き延ばされた内壁が悲鳴をあげる。
あまりの痛みに珂月は声も出なかった。
珂月は眉根を寄せ、きつく瞼を閉じて必死に涙をこらえた。
男は奥まで突き進みながら、珂月の辛そうな顔を見て上唇を舐めた。
「ああ、そんな顔もたまんねえな」
男は最奥まで入れてしまうと、乱暴に腰を振りたてた。
安物のベッドが音を立てて軋む。
「っああ……いっ、いた……」
容赦なく揺さぶられ、珂月は激痛に喘いだ。
立ちかけていた珂月の自身はすっかり萎えてしまった。
だが男はそんなことお構いなしで、気持ちよさそうに腰を打ちつけている。
「はっ……、おい、俺の名を呼べよ」
珂月は閉じていた瞼を上げて、潤んだ目で男を見上げた。
「呼べよ、ほら」
「ひあ！」
強く最奥を突き上げられ、珂月は喉をのけぞらせた。
「し、知らな……っ」
呼びたくても、男の名前を珂月は知らない。
男は言われて名乗っていないことに気がつき、少し間を置いたあと、
「ルザ」
と言った。
珂月はこの激痛から逃れたくて、夢中で男の名を紡いだ。
「ルザ……ルザあっ」
ルザは不敵に笑い、さらに強く腰を打ちつけた。
人間とダラザレオスとでは、体力にも大きな差がある。
華奢な珂月が、彼の攻めに耐えられるはずもなかった。
「る……やあっ、ルザ……ルザあ……」
珂月はうわごとのように何度も繰り返した。
次第に意識が混濁していき、ルザが中で達するころには、なにもわからなくなっていた。
◆
翌朝、珂月が目覚めたとき、ルザの姿はどこにもなかった。
珂月は布団もかけず、素っ裸のままベッドに横たわっていた。
起き上がると腰が鈍く痛み、秘部からどろりとした液体が流れ出てきた。
夢で片づけられればどんなによかったか。
しかし現実にルザの爪痕が残されている。
ベッドの下にはびりびりに破かれたシャツが落ちていた。
窓は開けっぱなしで、温かな太陽の光が差しこんでいる。
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