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遥か復活夢物語



第一章
鳴り響く始まりの鈴



イタリア
エネストローネファミリー地下室

アリアはそこに来ていた。


地下室には牢に入れられた子供たちが沢山いる。


エストローネオファミリーの戦力として、日々人体実験を施されている子供だ。


アリアはそんな子供たちの面倒を見て居るのだが、今回の任務で日本に行く間、会うことが出来ないのを伝えに来たのだ。




監視役の人から鍵を受け取り、牢の中に入る


ほとんどの子供は気力がなく、アリアが入って来ても、端っこでただアリアを見て居た。


そんな中


「あー!
アリア姉ちゃんじゃん!!」

明るい声と共に小学生1〜2年ぐらいの子供がアリアに抱きついた。

「よっ!」

アリアはその子を抱きとめて頭を撫でる。

その横で眼鏡の抱きついた子と同い年ぐらいの子がアリアの裾をツンと引っ張る。

「アリアさん…」

アリアは優しく微笑み、その子の頭も撫でる。


抱きついた子は城島犬、この場には珍しい元気で活発な男の子である。

眼鏡の少年は、柿元千種、口数は少ないが優しい少年だ。


二人共牢の中で中心的な存在で、とてもアリアに懐いていた。

他の子供たちもアリアに懐いては居るのだが、精神的ストレスからか近寄っては来ない。


牢に居る子供たち一人ずつに持ってきたお菓子を渡した。
甘い、甘いチョコレートだ。
渡された子は皆嬉しそうに包装紙を外してチョコをほうばる。


そんな中、一人の少年だけチョコを食べて居ない子がいる。


その子は特徴的な髪型で、片目が無く、げっそりとやつれていた。


その子の名前は骸

名字は無い、父親が誰か分からないのだ。

母親は居た…だがその人は生まれたばかりの骸をエネストローネに残して何処かに行ってしまった。


骸と言う名はファミリーの学者によって名付けられた名である。


骸はチョコを食べない


ぼーっと包装紙の柄を見つめている。


彼はチョコだけではない、食事として出される小さいパンも余り食べることはない。


千種がアリアの裾をギュッと握り、心配そうに骸を見る。



アリアは骸の前でしゃがみ、目線を合わせようとする。

だが骸と目線は合わず、骸はただ包装紙を見つめている。


「骸ー出来たらチョコを食べて欲しいな」

ぽんっ

と頭に手を置くと、ビクッと肩を震わせてアリアを見た。


「……アリア」


アリアは骸の持っているチョコの包装紙をはがし骸の口に入れる。


「あまーいでしょ?」

骸はアリアの言葉にコクンと頷いた。



アリアはみんなチョコを食べたのを確認し、任務の話しを始めた。


「僕、明日から任務で日本に行ってくる。」

アリアの言葉に犬がえっーと不満そうに叫ぶ。
柿元は日本って何?と聞いて来た子に教えている。


「じゃあ姉ちゃんしばらく此所これねーじゃん」


犬の言葉に何人かの子が「嫌だ」「寂しい」など言っている。

「ごめんね。
まあ多分長くて一ヵ月したら帰ってくるから待ってて」


「そんなにぃぃ」


犬がぎゃんきゃんと騒ぐのを千種がなだめる

「任務なんだからしょうがないでしょ」

「うー」

「日本は警戒心の強い国だからね、誘拐となると大変なんだよ」

今回の任務はターゲットの身近に潜入し、油断させてから此所へ連れて来るというものだった。
本当ならもっと簡単に誘拐出来るのだが、今日本には敵対マフィアがいるので余り派手に動けないのだ。



「気をつけて…」


ギャーギャーと騒ぐ子供たちの中で骸は小さく呟いた。


アリアはしばらく子共たちと話してから部屋を出て行った。


「千種、骸がちゃんとご飯食べる様に見張っててね」

「うん」







チリンッ








アリアが一ヵ月経っても帰って来ないことを骸は知っていた。

骸はチョコの包装紙を優しく握った。



祈る様に…



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