凡ボンリボーン!
No.06「その後」
屋上で自殺未遂があってまだ数時間しかたって無いのに、もう教室の様子はすっかりいつも通りになっていた。
皆本当に、立ち直り早い。
休み時間、私は穂菜実の横の席に座ってまた溜め息をついた。
「なんだ夏希、まださっきのこと気にしてんのか?」
穂菜実が呆れた様に言う。
呆れてるのはこっちだ馬鹿野郎。
「穂菜実が単純なのは知ってたけど…
まさかクラスメイト皆がそうとは知らなかった」
聞かれたら失礼だと怒られそうだが、教室は生徒達の騒がしさで満ちていて、私の話しなんて誰も聞いて居ない。
まあ、私の話しを聞く穂菜実はムッとと口をへの字にしているが………まあ、穂菜実だし。
「おい」
山本君が私に話しかけて来た。
実は昨日のことを抜けば直接関わるのは初めてのことで、私は驚く。
見れば二カッと笑う山本君がこちらを見下ろしていた。
少しホッとした。
もうすっかり元気になったようだ。
良かった。
そう思っていたのが顔に出たのか、山本が少し申し訳無さそうに頬を掻いた。
「えっと…」
困った顔を見て私は気付いた。
……まあまだ入学から二ヵ月で、話しするのもこれが初めてなのだからしょうがない。
私は山本君みたいな人気者じゃない平凡な生徒だしね。
あ、ちょっと卑屈っぽいかな。
「鈴木 夏希だよ。
無事で良かった、山本君」
そう言って笑いかけた。
「あっ、鈴木な!」
そう言って山本君は鈴木、鈴木となんとか復唱した。
穂菜実の同情の視線が痛い。
「いや〜心配かけてごめんな鈴木!」
「えっ?いや、別に…」
勝手に私が心配しただけだし…と言おうとしたら横から邪魔が入る。
「全くだ!
皆凄く心配してたんだぞこの馬鹿が」
穂菜実の鋭い睨みに山本君は苦笑いしてまた謝る。
「わ、わりぃ並川」
穂菜実はジトッと山本君を見た後、フンッと鼻で息を吐いてそのまま机にうつぶせになった。
ついでいびき。
寝るのかよっ、落ちるの早いよっ、いびき五月蠅いよ!!
ちなみに山本君が穂菜実の名前は知ってるのは、穂菜実も山本寄りの人間だから。
男らしい穂菜実はよく女子に告白されている。
思わず穂菜実を見ていた私の前に、ハンカチが差し出される。
「あ…」
これは…私のハンカチだ。
そう言えば、山本君が骨折した時、汗拭いてあげてそのまま貸したんだった。
すっかり忘れてた。
受け取って山本君を見る。
「本当ありがとな。
あの時お前が直ぐ来てくれなかったら、俺どうなってたか分からない」
優しげに、少し悲しげに笑う。
私も、ニッコリ笑った。
まあなんか、格好良い山本君の笑顔と並ぶと私の笑顔かなり霞むけど…。
「私なんて、大したこと出来ずにオロオロしてただけだよ。
……腕、辛いかも知れないけど、骨折って直せるから、野球…諦めずに頑張って」
「サンキュ。
オロオロだなんて、そんなこと無いぜ。
大丈夫って言われた時、俺…どろどろがスーッとしてフワッてしたからな!」
な!と締めくくるところで親指を上に上げてグッドのポーズをとる山本君。
…………山本君の手振り身振り付き話しに私少しフリーズ…。
「あーっと…」
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