歪みのリボーン
吸血鬼、我慢出来ず
「凄い…」
一千万の小切手をひょいと出してしまうのだから、かなりのお金持ちだとは思っていたけど…
ここはベルサイユ宮殿ですか?
吸血鬼、我慢出来ず
車で連れて来られた白蘭さんの家は、敷地内に入ってもまだ家に着かず、車の窓から見える景色はまるで映画で見たベルサイユ宮殿のような作りをしていた。
呆気に取られていた僕は、白蘭さんのクスクスと笑う声で我に返る。
なんだか恥ずかしい。
まるで田舎から都会に初めて来た人みたいだ僕。
「あの、なんで僕を買ったんですか?」
恥ずかしさを紛らわすように、でもとても気になっていたことを聞く。
「ん、それはねー」
そう言って、広い車の中で僕に近付いてくる。
「それは?」
楽しげに隣までやって来た白蘭さんは、さっきとは少し変わった笑顔な顔をかなり近付けて来る。
な、なんでこんなに近付いて来るんだ?
薄い紫色の瞳が、迫ってくる。
僕は思わず唾を飲んだ。
「ふふ、着いたらゆっくり教えてあげる」
白い手にするりと顎を撫でられて、背中がぞくぞくした。
なんだか、怖くなって白蘭さんから離れようとするのに、身体が動かない。
目の前には、笑ったままこちらを見つめてくる白蘭さんがいる。
目を合わせちゃ駄目だ。
なんだか分からないがそう思った。
でも目が放せない。
こんな空気、さっきまで無かったのに!
なんなんだこの怪しい雰囲気は?!
そんな心の葛藤が、紫の瞳と、頭を撫でる白い手にとろりとろりと溶けていく。
なんだか…熱い。
どのくらいかたった頃、僕は口を開いた。
「びゃく、らんさん?」
細い指が髪を梳いていくだけなのに、ゆっくりと動くそれは僕をぼーっと何も分からなくさせる。
「正ちゃん、そんな顔されちゃうと我慢出来なくなっちゃうよ」
白蘭さんが嬉しそうな顔でそう言う。
その嬉しそうな顔に、僕は正気に戻った。
なんかヤバい。
このまま流されたらヤバい。
「あの、放して下さい」
慌てて白蘭さんの手を掴む。
が、その手を引いて白蘭さんはそのまま握っていた僕の腕を口元に持っていく。
「家着くまで我慢しなきゃと思ってたんだけど…
我が家は家に着くまで時間掛かるからな。ちょっとだけ味見」
「え?!
ちょっ、はぇ?」
ペロリと僕の腕を舐めた白蘭さんに僕は慌てて腕を引こうとするが、掴まれてしまう。
「ちょっと何やってんですか?!」
聞くが白蘭はただ腕を舐め続ける。
ツキンッ!
「ひぃっ?!」
腕に痛みが走る。
ツーと腕を伝ったのは赤い血。
まさかこの人血を吸って!?!
変態だぁ!
「ちゅう、ちゅく、ちゅりゅる」
「っはぁ、白蘭さん何してんですか?!
止めて下さいっ!!」
始めは痛かったが、その後腕に感じるものはそうでは無かった。
さっき頭を撫でれていた時の様な感覚。
ヤバいまた変な気分になって来たじゃないか!!
う、あぁ、んぅ
血を吸われる度にぴくぴくと身体が震える。
心臓が強く波打つ。
熱い、熱い。
血液を奪われてるのになんで熱くなるんだ。
「んっ、ふふ
やっぱり正ちゃんの血は甘いね」
そんな白蘭さんの満足げな声が聞こえ、僕は意識を失った。
売り飛ばされた挙句、買い取り主は変態。
僕の人生終わった。
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