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歪みのリボーン
道筋のウカレ兎



「ったくなんでこんなもん着なきゃなんねぇんだ」


赤いスカートの、足に感じる違和感で蟹股になりながら持田は愚痴を零す。

「はいはい、男がいつまでも愚痴ぐちと…
見苦しいですよ」

そんな持田に骸が嫌な顔をしてそう言う。

それに持田はまた腹を立てて骸を睨む。

だが骸はその視線を全く無視してそっぽを向く。

「……やっとですか」

そしてそう呟いた。


「え?」

骸の呟きに持田が頭を傾げる。

骸は持田を見てニッコリ微笑んだ。

「さあ準備も整ったことですし、白兎を追いましょう…剣介」

紳士的に手を差し出され、持田は驚く。

(名前…剣介って)

持田は骸に今までを貴方や君、一番初めにあった時にフルネームで呼ばれて以来名前を呼んで貰ったことが無かった。

だが、今、名前で呼ばれて、余りに優しい声だったので驚いた。

そして思わず骸の差し出された手を取った。


「あの…白兎さんを捜してるんですか?」

横で二人のやりとりを見て、少し顔を赤くしたハルが気まずそうに聞いた。

持田が頷く。

「そうなんだ。
森に入ってたのを追いかけてたんだけど見失っちゃってよ。
なんか知ってるか?」

「はひ、今日白兎さんは大事な様があるようで、とても急いでましたよ。
アリスが来る少し前に家に来てハルが仕立てた服を取りに来て…
この後ツナさんのところに寄るって言ってましたよ」

ツナ…新しい名前が出て来たが、持田には少し思いあたる人物がいた。

(……まさかな?)

直ぐに否定しようとしたが、隣の骸の一言で出来なくなってしまった。

「帽子屋の…
沢田 綱吉ですね」

骸が珍しく本当に嫌そうに顔を歪めていて、持田も顔色を悪くさせた。

持田は思わず自分の黒くツンとワックスで固めた髪を触る。

沢田綱吉と言えば、持田にとって人生で嫌いなヤツランキングの上位3位に入っている人物だった。

あの出来事は、自分の自業自得ではあったが、何もあそこまで酷い仕打ちしなくっても良かったのではないかと持田は思っていた。

馬乗りになって頭を掴まれ…

思い出しただけでも頭皮に痛みを感じた。


「わかりました、ありがとうございますハル。
今度千種に茶菓子を送らせますね」

骸がそう言って俺の手を引いて家を出ようとする。

「はい!
またいつでもいらして下さいね!!
ハルはチャシャ猫さん嫌いじゃないですからね!!
アリスもまた!」

「また来てねアリス!」

「アリスじゃねぇよ!
じゃあな!!」


そうして持田と骸は仕立て屋から出て行った。


「………アリス、白兎さんを捕まえられるでしょうか」

持田が出て行ったドアを見つめ、ハルは心配そうに呟いた。

そんなハルの手をフゥ太が包む。

「大丈夫だよ!
アリスはちゃんと僕のこと理解してたもん。
きっと本当を見つけられるよ」

「…そうですよね!!
よっし、次アリスが来た時にプレゼントする服を作りましょうか」

そう言ってフリルやレースを取り出すハル。

「うん」

フゥ太が嬉しそうに一本背中の針を抜いて頷いた。



一方、また森を歩き出した持田はまた骸と言い合いをしていた。


「だから知ってるなら案内してくれてもいいだろっ」

「なんで僕が無償で君に尽くさなければならないんですか、自分でなんとか出来ないんですか?」

ツーンと言った風に顔を背ける骸に持田が顔に青筋を立てる。

「お前が京子を追えっつったんだろうが!」

「だからって何もかもお膳立てしてやる程僕は暇じゃ無いんです」

「忙しい様には見えないけどなぁ〜」

ふよふよと宙に浮く骸を睨む持田。
骸はそっぽを向いてその視線を無視する。

「道筋は教えます」

そう言った骸に持田は折れた。

「分かったよ。
それでいいから早く言え」

「全くアリスは我が儘な上に偉そうで困ったものです」

ひくりと持田は口元を痙攣させる。

(いや、ここでまた怒鳴ったら振り出しに戻っちまう。
落ち着け、行き方を聞いたらこのクソ猫とはおさらば…)

「………」

絶える様に下を向いて黙り込んだ持田には、この時上から見下げていた骸がどんな表情で持田を見ていたか分からなかった。

「………ふぅ」

ただ、上から聞こえた溜め息に、キレないように絶えただけだった。

「帽子屋の元に行くにはウカレ兎を捜した方が早いですね」

「ウカレ兎?」

「いつもケラケラとうざったい笑みを浮かべた狂った兎ですよ」

骸は苦虫を噛み潰した様な顔をして言った。

思わず見上げて見た持田が噴き出す位に。

「何?
そんな変な奴なの?」

「僕にとっては彼ほど嫌な住人はまだ会ったことがありません。
まあアリスにとっては違うかも知れませんが」

「は?
どう言うことだよ?
仲が悪いとか?」

「………どうでしょうか?
たまに会ってお茶をする仲ですが」

「…………」

(意味分からん…)

顔を歪ませる程嫌な相手と言いながら、仲が悪いかは分からないと言う骸に今度は持田の眉間にしわが寄る。

「彼を捕まえれば一瞬で帽子屋まで連れてってくれるでしょう」

「…ふーん、じゃあそのウカレ兎は何処にいんだ?」

「彼は名前を呼べば来ますよ」

そう行った骸は息をスーっと吸い上げた。

「山本 武ーっっ!」

叫ばれた名前は持田も知っている名前だった。


(京子といい沢田といいなんで知ってる奴ばっか出てくんだよ…)





アリス君が帽子屋へ行くにはある人の協力が必要さ

アリスの道筋を開く彼の名前はウカレ兎!

いつもニコニコ爽やか笑顔なウカレ兎さ!

優しくて、元気で、いい男!

何故なら兎は嬉しくてウカレているからさ!!

誕生日じゃ無いこの時を!

けどね誕生日の日に彼と会ってはいけないよ?

その日だけは、彼はウカレて無いからさ

彼は絶望するからさ

アリス、君には分かるよね?

絶望した生き物が、どんなものかを…

君は知っていたのだから…



さあ、誕生日じゃない君おめでとう!!




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あきゅろす。
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