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歪みのリボーン
ハリネズミの涙



しばらく唖然とその場に座り込んでいた持田は、30分位たった後、やっと立ち上がることが出来た。


突然目の前に居た人間が消えたのだ、その位のショックを受けても仕方が無い。


だが、このまま動かない訳にも行かない。

持田は骸が言っていた通りに京子を捜すため、森に入った。



「あーさっきのはマジびびったぜ」

まだ少し立ち直れていない持田はややぐったりとした体勢で森の中で歩いていた。


京子はもう随分と森の奥に入ってしまった様で、見当たらなかった。

「何処だよー?
京子ー??」


見えるのは

木、木、木、木

木ばっかりだ。

そして青々と生い茂った草だけ。


京子以外の人間も見当たらない。


「はぁ…
なんでこんなことに」


持田は、京子を追わずに真っ直ぐ家に帰っていれば良かったと少し後悔した。

だが男として、好きな女のバニー姿を見てほって置ける者などいるだろうか?
いや、いやしない。

目で追い、追いかけてしまうだろう。


「じゃなきゃ男がすたるぜ!!」

「オネショしても男はすたらないの?」

「ふぎゃっ?!」

一人意気込みガッツポーズを決めていた持田の後ろから、幼い子供の声が聞こえた。

振り返ると小さな動物の耳と、背中に沢山の針がついている男の子が持田を見上げていた。

「な、な、俺はオネショなんてしてねぇ!」

持田がそう怒鳴ると男の子はしゅんと落ち込んだ。

うるうるの瞳を潤ます子供に持田は嫌な予感がして慌てる。

「なっ、おい、そんな落ち込むなよ!
怒鳴って悪かったから泣くな、な?」

そう言うと男の子はニコッと笑った。

「理解してる見たいだね」

「は?」

男の子の理解してると言う意味が分からなかったが、はたと持田はズボンを見て顔を赤くした。

そこには小さな地図がしっかり出来上がっていた。

先程唖然としていたのが長くて忘れていたが、自分は確かに骸のマジックみたいなのにびびって…

「うわぁぁぁぁ」

持田は両手で染みの出来たズボンを隠す。
耳まで真っ赤の持田に男の子はニコニコ笑っている。

とても可愛い笑顔だが、今の持田にとってその笑みほど憎いものは無かった。


「服貸してあげようかアリス」

「は?え、服?」

男の子の申し出は嬉しい限りだった。


持田はまず服を着替えに男の子の家に行くことにした。

「あ、言っとくが俺はアリスじゃなくて持田剣介だぞ」

先程アリスと言われたことを思い出した持田はそう訂正した。

「…アリスはアリスだよ?」

「だから違うって」

んーと男の子は可愛らしくうなった。

「じゃあ剣にぃ
ボクはハリネズミのフゥ太って言うんだ、よろしくね」

「あ、よろしく…」

そう言って手を差し出したフゥ太に持田も手を差し出すが、避けられてしまった。

「やっぱりいいや、手汚いでしょ?」

可愛く頭を傾げて聞いてくるのがまた憎らしいと持田は思った。

だが、服を貸して貰う身として、口に出すことは無かった。


我慢、我慢だ俺!



持田、なんとも情けない男だった。






不思議の国には森がある


森のお家に住んで居る


ハリネズミの子を泣かしちゃいけないよ


涙を止めなきゃいけないよ


可愛いお顔が崩れたら


お歌を歌ってあげよう


頭を撫でてあげよう


もしあの子を泣かしたら…


アリス、君は生きては居ない…




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