遥か復活短夢物語
不適合物
俺は知っていた。
ソレにとって俺は不適合物であると…
知っていたから…
*不適合物*
「だから変態科学者になったの?」
艶やかな黒髪をなびかせて、信じられないことに俺のデスクの上に腰を落ち着ける彼女はそう言って笑う。
……変態科学者については否定出来ない。
が、
「だからって訳じゃないよ。
そもそも俺にはそう言う気があった」
そう言ってよく部下に不気味だと言われる笑みを浮かべる。
彼女は片眉を吊り上げて口をつのらせた。
「じゃあ知っていたから何よ?」
コロコロと表情が変わる彼女はどうして俺なんかをそんなに知りたがるのだろうか?
彼女を見てそう思い考えてみるが分からなかった。
突然頭に衝撃が走る。
「イテッ」
「人の話し無視した挙句こっち見たままトリップすんなって言ってるでしょアッシュ」
彼女を見ていたと言うのに、白衣から覗く握り拳に俺は気付かなかったらしい。
全く…
あんなに細くて繊細に見える指をまとめて振るうだけでこんなに衝撃があるとは、本当に彼女は謎だ。
彼女の目が座っていることに気付いた俺は寒気を感じて顔を背けた。
盛大な溜め息が斜め上から俺の髪にまで届いた。
しばしの沈黙の後、彼女がデスクを降りた気配がした。
「言いたくないなら言わないでいいわ」
そう言って彼女は僕の部屋から出て行った。
ん?
………何の話しだ?
彼女のことを考えていたら何の話題だったか忘れてしまった。
不適合物は投与しないに限る。
だから俺はソレの中に入ることを止めた。
交わることは出来ないのだから。
俺は全く構わなかった。
俺がソレの不適合物な様に、ソレは俺の不適合物だったから…
ただ一人を覗いて…
「兄さんっ!
今娑音(シャオ)さんこっちに来た?」
慌てた顔で俺の部屋にやって来た唯一の例外、弟にパソコンに目を向けたままこたえる。
「来たね」
「何処行ったか分かる?!」
「………分からない。
俺にとって彼女は謎ばかりの女だから」
顔を上げると弟は居なかった。
多分分からないと言った時にすでに走り去ったのだろう。
俺は家族と言うソレの中で、唯一弟だけは離れることをしなかった。
本当ならアイツが一番俺にとって憎むべき相手だとしても…
初めて真っ直ぐに俺を写して出してくれた子だから。
〜〜〜〜後書き
ごめんなさい意味不明で…
アッシュの過去話しです。
まだアッシュがギリギリ成人して無い時の話し。
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