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魔法少女リリカルなのはStrikerS 護るための力を持つ者
ハロウィン記念小説
「えっと、ハロウィンパーティ……ですか?」

『そうや。どちらかと言えば私達が居た日本だとそこまで目立ったイベントでは無いけど、小さい子達がが楽しめることをしたいと思っているんよ……協力頼めんかな?』


機動六課の解散式から一年以上が過ぎたある日の夜、コルトはモニター通信越しにはやてからとあるイペントへの協力を申し込まれていた。とあるイベントというのは地球で行われているイベントの一つであるハロウィンにちなんだパーティで、コルトに頼まれている役割はコルトの趣味兼特技であるお菓子作りの実力を見込んでのお菓子の制作、そしてコルトの母親であるカローラへの協力依頼を行うことの二つだった。


「まずお菓子作りに関しては問題ないので協力しますね。ちょうど最近、休暇を使用しろって注意も受けていたので前日から準備をしようと思えば出来ますし。ただ……」

『……カローラさんの方は難しい感じ?』

「分からないっていうのが正しいですね。母さんのスケジュールはそれこそ唐突に変わっていきますからね……」


 カローラは基本所属している研究所での研究を日々の仕事としているが、時折実際の発掘現場や副業としているデバイスマイスターとしての飛び込みの仕事を行っていたりする。そして自身の予定に関しては他人に一切伝えることなく行動してしまうために連絡が取れるかも分からないのだ。一応メールを送っておけばそのメールを確認してくれた際に連絡をくれるのだが、これに関してもカローラが不必要だと考えたメールは削除されてしまうので確実に確認してもらえるわけではないというのが今まで削除されたことが無い約一名を除いた認識だった。


「とりあえずメールで確認をしてみるので母さんに関しては「その必要はないよ」……って母さん!?」


 突然聞こえてきた声にコルトがはやてと繋がっているモニターから視線を外し、後ろへと振り返るとそこには話題の対象となっていたカローラが立っており、してやったりと言いたそうな表情を見せていた。


「ど、どうしてここに!? てかどうやって入ってきたの!?部屋の鍵は閉めておいたよね!?」

「そんなに叫ぶんじゃないよ。質問に順に答えていくならここに来たのはワイルドソウルとゲイルフーブズの定期メンテナンスをする為にそれを受けとる為で、部屋に入れたのは他の隊員達が使うデバイスのメンテナンスをした後に依頼者の指揮官から一時的にマスターキーを借り受けているから、最後のはちゃんと閉まっていたのを開けただけだから安心しな」

「マスターキーって……母さんも母さんだけど、隊長も……はぁ」


カローラの回答にコルトは思わずため息をつきながらカローラにマスターキーを渡した部隊長の顔を思い浮かべる。その部隊長の顔は全くといって悪びれた様子はなく、むしろ笑みを浮かべていた。


『それでですね、カローラさん。どこから通信を聞いていたかは分かりませんが、実は「説明は要らないよ。要するに子供受けする小道具を用意したらいいんだろう?」……そ、そうなんです。なので……「問題ないよ、それくらいならすぐに……」


当初の予定とは異なってしまったが、直接やり取りできた方が良いはやてとカローラは簡単に用件の詳細を確認していく。そのやり取りの中で常にカローラがはやてが話し終わる前に次の言葉を発していたが、その事を指摘する気力は脱力感からベッドに倒れこんでいたコルトには残っていなかった。





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「これでよしと……とりあえずはこれだけ表に出しておけば問題ないですよね?」


 ハロウィンパーティ当日となり、予想以上に今回のパーティに協力的だったカローラの厚意から会場として提供された大会議室のテーブルを前にして飲食物に関しての最後の確認を行っていた。既にテーブルにははやてが準備した料理と共にコルトが作成したケーキやクッキーといったお菓子が並べられており、ここにあるもの以外にもある程度物が減ってきた時の補充用のものもキッチンに用意されていた。


「そうやね。それじゃあもう皆も揃ってきてるし、そろそろ始めようか。乾杯してからはコルトはもう自由にしてもらってええからね?」

「はい。分かりました。補充が必要になった時はフォローするので呼んでくださいね?」

「その時は頼むね? それじゃあ私は最後の仕上げしてくるから皆と一緒に待っててや」


はやてが軽く手を振った後に歩いていくのを見てからコルトも一旦会議室を離れ、パーティに参加する面々が待機しているエントランスへと向かう。エントランスへと到着するとパーティの参加者達はその大半がハロウィン用のコスプレ衣装を着て思い思いのことをしており、コルトはその様子を軽く見回した後にとある人物の元へと歩いていく。


「……あっ、お疲れ様コルト。もう準備は終わったの?」


 コルトが向かった人物――スバルはコルトが歩み寄ってきたことに気がつくと座っていた場所から立ち上がる。そして予め買っておいたのか水のペットボトルを取り出すとコルトへと手渡した。


「僕の分は一応ね。あとは八神分隊長が最後の仕上げをしたら終わりなんだって……ん、そのコスプレ、やっぱりスバルによく似合っているよ」


 スバルの今着ているものはハロウィン用にと主にはやてとシャマルが用意したものの一つである狼人間のもので、服自体は比較的スバルの私服に近いものではあるが、その頭部には狼の耳をイメージしたカチューシャが付けられており、また手や足は狼のそれをイメージした手袋や履物をつけていた。その姿を褒められたスバルはわずかに頬を染めながら笑みを見せた。


「やっぱり改めて言われるとなんだか恥ずかしいね。コルトは今回コスプレはしないんだっけ?」

「うん。最初は簡単なものならいいかなって考えたこともあったけど、今回はどちらかと言えばスタッフ側だし、ちゃんと動きやすい形でいた方がいいかなって思ったからね。それに僕なんかがコスプレしたってなんというか……「甘いぞコルト!」……っ!?」

 コルトの言葉を遮るように聞こえてきた声に二人は揃ってその声が発せられた方へと視線を向けると、そこにいた人物の顔を見て揃って目を見開く。二人の視線の先にいた人物は着ている服だけ言えば吸血鬼のコスプレだが、その頭部にはカボチャを顔の形にくり抜いたものを被っていた。そのインパクトに最初はつい黙り込んでしまった二人だったが、少しして落ち着きを取り戻し、聞こえてきた声を頼りに確認するように話しかける。


「え、えっと……ブルズ……だよね?」

「それ……飾り付け用のカボチャ?」

「おう、俺以外誰だと思ったんだ? これについては八神部隊長に聞いたんだが、地球の方でもこうやって被るのも使用法としてはあるんだとさ。さっきヴィヴィオ達の前で被って見せたら結構気に入っていたぜ?」


 カボチャを被っていたのは二人が予想した通りのブルズで、被り物を取るとそれを軽く叩いて見せ、その後にとある一角を指さす。その方向へと二人が視線を向けると確かにヴィヴィオとそのクラスメート、そして元起動六課メンバーの最年少組だったエリオとキャロがブルズが持っているのと同じ被り物を代わり代わり被って見せたりしていた。


「こういう時は似合う似合わないとかは考える方が損だぜ、こういう時は調子に乗ったもの勝ちってもんだ」

「そ、そうかなぁ……」

「そんなもんなんだよ。特に今日みたいな子供が主役な日なんて羽目を外していた方が年少組も気楽になれるもんさ」

「まっ、このおバカは調子に乗りすぎかもしれないけとね」


 更にブルズについてきていたのか、同じく吸血鬼のコスプレをしたティアナがブルズの横に立つ。ブルズはティアナの発言に意味ありげな視線を向けたが、ティアナはそれに気がつきながらも無視しながら言葉を続ける。


「だけど実際堅く考えすぎるは止めてもいいんじゃない? 折角の身内だけの楽しみな訳だし」

「……コルト、私もブルズやティアのいう通りだと思うよ。あとさりげなくネガティブな発言してたけどそういうのはナシだよ?」

「ご、ごめん……だけどそうだね。こういう時はちゃんと楽しまないと意味ないよね」

「そういう訳だからコルト、お前もコスプレ決定な。ちゃんとある程度見積もっておいたから後は実際に試すだけだ。いざ連行!」

「「了解!」」

「うわたたっ!? わ、分かったから引っ張らないで!」


 ブルズの合図でスバルとティアナの二人がそれぞれコルトの手を取ると更衣室がある方へと引っ張っていく。そして更衣室のドアが閉められるとそのドアはパーティが始まる直前まで開かれることはなかった。





――――――――――






「えーっ、それでは今からハロウィンパーティを始めます。みんな、思いっきり楽しんでいってな……乾杯!」


「「「「「かんばーい!!」」」」」


簡易的に用意されたステージの上で狸の耳がついているカチューシャを着けたはやてが発声するのに合わせて、比較的ステージの前で集まっていた年少陣がその手に持っていたジュースが注がれているコップを軽くうちつけあう。またそれ以外にパーティに参加している面々もそれぞれ近くにいたメンバーと乾杯を行い、テーブルに用意された料理やお菓子をそれぞれの皿へと取りはじめる。


「このパンプキンパイ、程よい甘さでつい食べ過ぎちゃいそうね」

「このこうもり型のクッキーもさっくりしていて美味いな」

「このパイはコルトが作ったのだけど……このクッキーはそうじゃないよね?」

「うん。このクッキーは高町部隊長からのだってヴィヴィオが持ってきてくれたものだよ。僕も用意はしたけど、それはまだキッチンだね」


 コルト達四人も一角に集まって食事を始め、それぞれその味を楽しむ。なおコルトは更衣室に連れ込まれて三人の着せ替え人形状態になった後にコスプレ衣装の中でも動きやすい方であったピエロのコスプレをすることとなり、その鼻には赤いつけ物が付けられていた。


「それにしても、今回は思っていたより多方面の人がそろったな。正直俺が知らない子どもとかもいるんだが……」

「今回のパーティにはヴィヴィオの友達とかの他に聖王教会の子とかも来ているしね……あっ、噂をすれば……」


 ブルズと会話をしながらこちらへと歩いてきた聖王教会のシスター服を着た少女に気がついたコルトはその少女に向けて手をふる。その行動に同じく手をふった少女はコルトの前へと立つと、笑みを見せながら手を差し出した。


「コルトさん、こんにちは! 早速ですがTrick or Treatです!」

「こんにちは、シャンテ。はい、しっかりとしたお菓子はこのパーティで出ているからあとで食べられるカップケーキで許してね」


 その少女-シャンテの言葉を聞いて、コルトは服のポケットから小さめのカップケーキが入っている袋を取り出すとそれをシャンテへと手渡す。シャンテはそれを受け取ると再度笑みを見せながら大事そうにそれをしまった。


「むしろ大歓迎です。コルトさんが作るカップケーキの美味しさは十分すぎるくらい知っていますし……きっと後で他にも来るので数が無いなら気をつけておいた方がいいよ?」

「一応それなりの数は用意しておいたから、他のみんなが来ても基本的には大丈夫な筈だよ。だけどありがとうね、気にしてくれて」

「まぁ兄弟子であるコルトさんが困っているところはあまり見たくないからね」

「コルトが兄弟子? この子、もしかしてシスターシャッハに教えを受けているの?」

「少し前からみたいだけどね。この子はシャンテ・アピニオン、聖王教会のシスター見習いをやっている子だよ」

「紹介を受けました、シスター・シャンテです。皆さんのお話はコルトさんから色々と聞かせていただいています。最近は陛下の訓練の相手もしているので今後は時折出会う時があるかと思うのでよろしく!」

「おう、俺はブルズ・アルフィードだ。ヴィヴィオのころ、色々と「ほら、まずはスバルさんたちのところ行くよ!」「あわわっ、分かったから引っ張らないでよ、リオ!」


 シャンテと面識のなかった面々が自己紹介を始めようとしたタイミングで、更に一組の少年少女がコルト達の方へと歩いてきた。その二人はそれぞれスバルのものに似た獣人間のコスプレのようで少女の方が
猫耳、少年の方は狐耳を頭に着けていた。


「スバルさん、今日は招待してくれてありがとうございます! ヴィヴィオ達と一緒に楽しませてもらっています!」

「リオは今日も元気だね〜」

「ん〜……はい、元気なことが取り柄ですから!」


 少女の方――リオはスバルに頭を撫でられて嬉しそうに目を細めた後に元気に受け答えをする。そんなリオに引っ張られながらここまで歩いてきた少年の方はコルトとシャンテの元へとやってくる。

「し、師匠、僕のことも呼んでくれてありがとうございます。ハロウィンっていうのはまだしっかり分かってないけど、このパーティは楽しませてもらっています」

「別に変に深く考えなくてもいいよ。とりあえず今日はみんなに楽しんでもらえればいいなっていうパーティだしね」

「まぁ真面目な君っぽい考えだけど、私より年下なのにそんなイベントの内容までしっかり知ろうと思わなくてもいいと思うよ〜……ふっふっふっ、えい!」

「うわああっ!?」

「あーっ!?」

 年齢に見合わず真面目な反応を見せる少年を前にして、シャンテは不敵な笑みを見せた後にその少年の背後に回り込むと彼のことをギュッと抱きしめる。シャンテの突然の行動に少年は顔を真っ赤にしながら驚きの声を発し、その声を聞いてスバルと会話していたリオは少年たちの方へと視線を向けた後にその状況を見て同じく大きな声を発した。


「な、な、な、何しているんですか! すぐに離れてください!」

「別にいいじゃないか。思ったより抱き心地いいからもう少し位さ〜」

「あ、あうあう……」


 リオの主張を聞きながらもシャンテはにやにやしながら少年を抱きしめ続け、それが恥ずかしいのか腕の中の少年はさほど抵抗しないでいた。


「これまた退屈しなそうなことで……この二人が例の?」

「うん、そうだよ。そういえば話だけでまだ会ったことなかったっけ?」

「そうね、スバルやヴィヴィオからも話は聞いていたけど、実際に会うのは今日が初めてね」

「あの焼きもちやいてる子がリオ・ウェズリーちゃんで、あの赤面してる子が……「コルト、お願いだからちょっとこっち来てやー」……今日こういうの多くない?」


今日で何度目かになる言葉を打ち消すように聞こえてきた声の方へとコルトが視線を向けると、そこには何故か頭に着けた狸耳の先が少し焦げているはやての姿があった。はやてはコルトと視線が合うと手招きをし、コルトはそれに応じてはやての元へと向かった。

「どうしたんですか? 見た感じ料理の補充はまだ良さそうに思いますが……」

「今回呼んだのは料理関係のことやないんよ。ちょっとこの機械のインターホンを押して、Trick or Treatって言ってみてや」

「えっと……これですか?」


はやての言う機械はちょうど電話ボックスほどのサイズがある箱形のもので、四面の内の1つだけがまるで明かりの灯った家の玄関のようになっているものだった。この手のものにコルトは自らの肉親の顔を思い浮かべながらも言われた通りにインターホンを押した。するとドアのようなものが開き、中から機械人形の老婆が姿を表した。そしてコルトの事をカメラの目で見つめた後に電子音声ではあるが話しかけてきた。


『おやおやこんばんは、ピエロさんが何のようだい?』

「えっ、えっと、Trick or Treat……で良いんですよね?」


予想外の人形の登場に驚きながらもコルトはハロウィンで子供がお菓子を貰うために発する言葉を老婆へと口にする。それを聞いた老婆は少しの間の後に腕を動かし、コルトへと小さな包み紙を手渡してきた。それをコルトが開いてみると、中にはいくつかの飴玉が入っていた。


『ハッピーハロウィン。少ないけどこのお菓子で許してね。よかったらまた来年もおいでよ?』


電子的ではあるが、どこか優しさを感じる音声で話した後に老婆型の人形はその扉を閉じる。それからすぐに口を開いたのははやてだった。


「やっぱりコルトでも成功しとる……なんで私らだけダメなんや〜」

「えっと……これって母さんが作ったものですよね? 前に僕の部屋で打ち合わせしていた……」

「そうや。流石に実際に家をまわってお菓子をもらいにいくのは文化的に無理やって分かってたから、せめて形だけでも小さい子達に楽しんでもらおうって考えからカローラさんに作ってもらったハロウィン疑似体験マシーンや。内容としてはさっきみたいにインターホンを押した後に合言葉を言えば一定確率でお菓子が貰えるか、お菓子があげられないと言ってイタズラを受け入れるか逆にイタズラしてくるっていう仕組みなんよ……ちなみに大体好評価貰ってるから企画としては大成功やね」

「リインはコルトと同じでお菓子をもらったですよ。後でゆっくりと食べるです♪」


はやての肩の辺りに浮いていたリインフォースUが自慢するかのように先程コルトが機械人形から手渡されたものと同じ包み紙に入った個別梱包されたクッキーを見せる。周りを見回してみればヴィヴィオやキャロの手にもその包み紙を見ることができ、楽しそうに話していた。


「で、さっきの話を聞くに部隊長はイタズラされている感じですか? 見たところ小道具が焦げてますけど……」

「そうなんや! 私以外にもイタズラになった人がいないわけではないけど、その場合はもう一度やったら大体お菓子をもらってる……だけど私と今はここにいないカローラさんの幼き助手さんだけは何回やってもイタズラしかされへんのや!」

「……それって特定人物は結果が固定されてるか、またはある程度からは同じ人物だからってオチじゃ……」

「ブルズ、ここで、あえて言わなくても良いと思うわよ?」


よほど悔しいのか声のトーンを上げながらの説明を受けブルズが思ったことを呟くが、はやてには聞こえていなかったようで再度チャレンジするためにマシーンの扉の前に立った。それを見た瞬間、近くにいたコルトとリインはなにかを感じて反射的にはやてから距離を取り、その後はやてによってインターホンが押された。

「お婆ちゃん、trick 『騒がしい狸さんや、物事には限度というものがあるのは知っているよな?』


インターホンが押されたことで再び機械仕掛けの老婆が姿を表す。だが聞こえてきたのは電子音声とは違う、とある少年の母親のそれに変わっており、人形の両手は先程コルトが押した時とは違ってまるで連続して投球が行えるピッチングマシーンのような形状になっており、またその手には白く丸いものが乗っていた。そして今から何かが起こるのを示すかのように、モーターの駆動音がそのボックスから聞こえるようになっていた。


『ハロウィンらしくお仕置きは可能な限り生卵を模した粘着弾だよ……避けられるなら避けてみな』

「た、退避ーっ!」



この後、はやてやその直線上にいたパーティ参加メンバーの一部に被害が発生する出来事が発生したが、結果として会場となった会議室からはパーティが終わるまでの間、楽しそうな声は絶えることがなかった。

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あきゅろす。
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