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魔法少女リリカルなのはStrikerS 護るための力を持つ者
プロローグ  とある少女の決意
私、スバル・ナカジマがこの道--魔導師への道を選んだ理由は三つある。

 一つ目はあの災害で私を空港から助けだしてくれたなのはさんへの憧れ。そして二つ目は私の力を誰かを守る為に使おうと思えるようになった心の変化。この二つ、特になのはさんへの憧れという理由は、周りのみんなにもよく言っている事から一番の理由と思っている。

 だけど残る最後の一つ……他の人にはほとんど話していないけど、これも私の中では大切な理由となっている。不謹慎かも知れないが最初の頃はこれが一番の理由だったかもしれない。






――――――――――




 実はあの災害の時、エントランスホールから救助されるまでの間、私はずっとあそこに一人でいた訳ではないのだ。あの時私は、周りからの高熱でほとんど動けなくなるまで弱ってしまっていて、前からゆっくりと倒れこんできている石像を見ても逃げる事が出来ず、ただ助けを求める事しかできなかった。


「助けて、誰か……助けて」


 乾いた喉から出したその声は、自分でも辛うじて聞こえるくらいの大きさで、色々な物が燃える音が四方から聞こえてくる中では周りには到底聞こえるようなものじゃなかった。だけどそんな私の声を聞いてくれた存在がいてくれた。


「――ッ!」

『Boost Dash!』


 眩しい光が横を通り抜けた直後、突然大きな音と共に石像が何か強い衝撃を受けたようにバラバラに砕け散る。そして柱を見上げていた視線を元に戻すと、いつの間にか私の前には同年齢くらいの銀色の髪の男の子が立っていた。


「なんとか間に合った……ふぅ……」


 何が起こったのかは一瞬の事でよく分からなかったけど、ただその状況から、男の子が何かしら魔法を使って私を助けてくれたのだけは分かった。


「危なかったね。大丈夫だった?」

「う、うん……」


 こちらへと振り向いた男の子の顔や服は、私と同じように煤や埃で汚れてはいた。だけど私にはそれでもとても綺麗……というより、今まで見てきた人の中でかっこよく見えた。


「助けに……きてくれたの?」

「そうだよ……って言えれば一番よかったんだけどね。僕もここから出られないんだ。だから助けが来るまで一緒に頑張ろう」

「あ……うん!」


 それから少しの間だけだったけど、私はその男の子の傍で助けが来るのを待った。一人でいた時は周りからの熱や煙でとても辛く苦しかったのに、隣にその子がいてくれるだけで不思議とさっきより楽に感じることができ、またその男の子から火とかから感じる熱さではない、人の暖かさを感じた事でまだ助かった訳では無かったのに安心感を覚えていて、気持ちが緩んでしまったのか、それとも疲れが一気に表に出てきたかは分からないけど私は一度意識を手放してしまった。

 そしてその間に男の子はどこかへと消えてしまっていて、次に気がつくと私の前にはなのはさんの姿があって、そのままなのはさんに救助してもらった。




――――――――――




 おそらく魔導師を目指すだろうあの男の子に出会って、あの時のお礼を言う――ちょっと恥ずかしいけど、私が魔導師になるのを決めた最後の理由は、こんな単純な希望なのだ。

 結局あの後、事故に巻き込まれた人が傷の治療等で集められた病院でも男の子の姿を見ることはできなかった。だけどあの男の子がいたことは紛れもない事実で、いつかまた会いたいと思っている。

 陸士訓練校へ入学する事を決めた時、強くなりたかったのは勿論なんだけど、男の子が私の予想通り魔導師を目指すのであれば、この学校に入ればまた会えるかも、と心少なくとも思っていたなんて周りが知ったら呆れられるかもしれない。

 だけどその時は本当にそう思っていたから恥ずかしいな……。


「スバル、あんまり暴れていると試験中にそのオンボロローラーが壊れるわよ」

「ティア〜、不吉な事言わないでよ。油はちゃんと注してきた」


 今私は、大きくなって魔導師としての道を歩き始めている。泣いているのも、何もできないのは嫌だから。憧れのなのはさんや、命の恩人である男の子に会えた時に強くいられるように……。

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