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short novel
FIRST CONFESSION
そのはじめては譲ってあげるよ






ボクはまるで、背中に羽根がはえてパタパタと空を飛んでいるような、そんなすごく楽しい気持ちだった。だって、今日もサファイアちゃんと一緒に遊べたから。彼女はすっごく可愛くて、笑顔はまるで、お花が咲いたように綺麗で。ボクの顔が汚れちゃった時は、ハンカチをとりだして拭いてくれたりと、すごく女の子らしい女の子で。ボクはまだこの気持ちが何なのかよくわからなかったけど、ただ、彼女のその笑顔をずっと傍で見ていたいって思った。

「まって!サファイアちゃん!」

「へへっ!ルビー君こっちこっち!」

フリフリの、瞳の色と同じ藍色のスカートをはためかせながら、ボクの前を駆けていくサファイアちゃん。あんな走りにくそうな格好なのに、見た目は蝶々がヒラヒラと舞っているような、そんなかんじなのに、彼女はとても足が速かった。

「ふふっ、ここまでおいで!」

彼女は振り返り、ボクに悪戯っぽい笑みを向ける。その瞬間、走りながら、後ろを向いたのがいけなかったのだろう、バランスを崩して、転んでしまいそうになる。

「危ない!」

ボクは彼女の腕を掴み、抱き寄せ、咄嗟に後ろに倒れこんだ。お尻のあたりズキンと痛みが走る。ボクはそのせいで、目をつぶってしまった。

「いてて...大丈夫?サファイアちゃん」

うっすらと目を開けると、そこには彼女の顔がもうあと数10センチくらいのところにあった。顔がなぜかわからないけど、熱くなっていく。彼女の吐息が、ボクの頬っぺたにあたったり、その音がすごくよく聞こえて、ドキドキする。

「ルビー君...あの...ありがとう。助けてくれて」

至近距離で笑みが花を咲かせる。なんて綺麗なんだろうってまたボクは思った。そして、なんだかよくわからないけれど、胸がキュンとして、何か熱いものが込み上げてきて、こんなに近くにいる彼女がすごく、すごく、可愛くて。でも、なんだか恥ずかしくて。ボクは顔を背ける。

「その、女の子を守るのは男の子の役目だって...父さんが...いってたから、その...」

「じゃあ、ルビー君はわたしの王子様なんだね!」

そういって飛びついてきた彼女。ボクはそのまま後ろに倒れ込んで、地面に背中をつけてしまった。サファイアちゃんがボクを見下ろしている。彼女の後ろから、太陽の光がサンサンと降り注いでいて、柔らかそうな髪の毛にそれが当たってキラキラとしていて、すごく眩しい。ボクはびっくりしちゃったけど、すっごく嬉しかった。だって、さっきボクのことを王子様っていったのなら、この子はきっと、ボクのお姫様なんだって思ったから。サファイアちゃんは口元に手をあてて、クスクスと笑う。ボクはママがしてくれるみたいに、彼女の背中に手を回して、ギュッてした。

「...へへっルビー君あったかい」

彼女の顔が、唇が、吐息がもうあと数センチくらいのところにある。ちょっとボクが顔を持ち上げれば触れられそうなくらい、近い。甘い香りがボクのお鼻に入ってきて、なんていいにおいなんだろうって思う。きっと、サファイアちゃんのなんだろうな。だってボクの目の前にいるのは、彼女だけだから。ボクはまるで、サファイアちゃんって名前のお花に誘われてきた虫さんみたい。なんだかとってもクラクラしする。

「...うん、それとくすぐったいね」

「...ルビー君あのね...わたし...」

突然、彼女の顔がなんだか曇ったような、なんだか辛そうな表情に変わる。藍色の瞳が少し潤んでいて、なんだか悲しそうにも見えて、でもボクを真っ直ぐに見つめてくる。ボクはそれから目が離せない。

「...すきなの...わたし...ルビー君のことが...すきなの」

サファイアちゃんはそう、消え入りそうな声で、顔を林檎みたいに真っ赤にして、ボクにそう言った。すき?すきって何だろうってボクは思った。

「すき?すきってなあに、サファイアちゃん」

彼女の顔が、もっと赤くなる。まるで、ボクの瞳の色みたい。

「あのね...父ちゃんがいってた。すきっていうのは、男の子なら女の子。女の子なら男の子に心が引かれることだって。その人といると、心がポカポカしたり、すごくキュンってしたり、時々苦しくなったりするんだって...」

ボクはこの時はじめて知った。この胸の中にある気持ちの名前を。サファイアちゃんも、同じなんだって思うと、何かが胸の中にたくさん溢れてくる。それは彼女の言う通り、ポカポカしたり、キュンってしたり、苦しくなったりする。これがきっと「すき」なんだって感じた。

「...ボクもだよ。ボクもサファイアちゃんのことすきだよ!」

「本当!ルビー君も同じなの!わたしすっごく嬉しい!」

パアァアァアっと彼女の空模様が晴天になる。太陽みたいな、輝きを放つ笑顔になる。ボクもつられて笑顔になっていく。ボクは思った。彼女とずっと一緒にいたいって。





*****





「ルビー!ルビー!こんなところで寝たら風邪引くったい!」

サファイアに揺り動かされて、ボクは目を覚ました。どうやら一人用のソファーに座って本を読んでいたら、そのまま眠ってしまっていたらしい。遠い昔の、幸せな夢から起こされてしまったのは少し残念だったけど、彼女の気遣いが嬉しかったから、いいかな。ボクはとことん彼女に甘い。

「ごめん、サファイア。起こしてくれてありがとうね」

「...毛布かけてあげようと思ったと...でもこのソファーじゃ窮屈と思って...」

「うん、ここで眠っちゃったら、きっと体が痛くなってたよ。本当にありがとう」

そう彼女に向かって微笑む。すると、何か言いたそうな、そんな顔をする。

「...どうしたの?サファイア」

「ルビー、どんな夢を見てたと。その...すっごく幸せそうだったったい。実は、本当に最初起こすのやめようかと思ったと...でも...」

彼女はいつもこう。ボクを労って、心配してくれている。そして、今は昔とは少し違うものが胸の中にまるで、洪水のように溢れてくる。その気持ちの名前は愛しさ。この女性を、心から愛しているということ。思わず、彼女の手をとり、引き寄せて抱きしめた。あの夢の中のボクみたいに。そして、耳元で囁く。

「...キミが小さいころにはじめてボクに「好き」っていったときの夢を見ていたよ、サファイア」

「!」

夢の中の、あの少女と同じ、真っ赤な林檎みたいな顔になるサファイア。今も昔もこれだけは変わってない。あの時とは正反対な性格に変わっているのにね。たぶんこれは彼女の本質は変わっていないってことなんだって思う。

「ううっ恥ずかしいったい...」

「思えばいっつもキミからなんだよね、好きだって告白してきたのは。まぼろし島の時もそうだし」

「うっ」

サファイアの顔はこれ以上赤くなったら、本当にフワフワと湯気が立ち上っていってしまいそうだった。でも、ボクの勢いは止まらなかった。彼女がボクの腕の中にいる所為もある。崩壊してしまったダムの水は、彼女の方へ向けてとめどなく流れていってしまうのだ。愛しい、愛しているという激しく、燃え上がる気持ちが。

沸騰しかけの彼女にボクはとどめの言葉を繰り出す。

「でもね、愛してるっていったのは、ボクが最初だからね、サファイア」









でも、このはじめては絶対に譲らない




















あとがき



とりあえず幼少期かいててこっちが恥ずかしくなった&攻めルビーが書きたかった。なんかやっぱうちのルビーさん激しいよ...

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