short novel
婉曲表現
好きじゃない!
「ねぇ、ルビー、あたしのこと好きって...言って?」
あたしはルビーの背中に抱き着き、首に腕を絡めて、彼の耳元でそう一生懸命に囁いた。こんなこと言ったのは初めて。目茶苦茶恥ずかしい。
「...君がそんな台詞を言う日がくるとは...」
座って編み物をしていたルビーは、あたしに顔を向ける。眼鏡越しに彼とあたしの目が合う。ほんの少し、驚いているみたいだけど、そこにはいつもと同じ、ポーカーフェース。
「ルビーはあんまりいってくれん....だから聞きたか...」
「...このマフラー、君の為に編んでるんだよ。そうやって、僕は態度で自分の気持ちを表す方が好きなんだよ」
「言ってほしい時も、時にはあるんったい!」
確かに彼は、ルビーは態度で示してくれることの方が多かった。沢山キスをしてくれたり、抱きしめてくれたり、今彼がいった通り、彼の手の編みかけの、真っ赤なマフラーは、半袖で寒そうなあたしの為にって、作ってくれているものなのだ。勿論あたしはそれらも大好きで、ああ、愛されてるんだなって感じる。でも、言葉も欲しい。乙女心は欲張りなもの。あたしは今無性にその言葉が欲しくて欲しくて、堪らなくて。何故かなんてわからないけど。らしくないことを言ってでも、聞きたくて。でも、こんなこと言ったことないから、なんだかんだもう、恥ずかしくて、彼を見ていられない。でも。
「...どうしても、聞きたか...ルビー...あたしのこと、好きって言って?」
ああ、湯だっていきそうなのだ。沸騰して、顔から湯気がでていきそうなのだ。だってこんなこと、普段のあたしじゃいえない。すると、カチャっと編み物を置く音が聞こえた。そして、沈黙。
あたしは彼のその一言を待つ。
「...好きじゃないよ」
小さな消え入りそうな声で、彼はそういった。えっ。なして?あたしは顔をあげる。彼と目が合う。
「好きじゃないよ」
ルビーは顔をあたしから背けて、またそういった。でも、それはあたしの心には別の意味に、とられていく。
「好きじゃない!」
3回目の"好きじゃない"。彼は口調を強めて、そういった。顔は真っ赤で、まるで林檎のようで。しかも、その言葉をあたしから顔をそむけて言っている。それはあたしの心には、痛いほど正反対の意味に伝わっていた。自分の言っていることを、そのしぐさが完璧に否定しているのだ。
それはつまり、好きってこと。
あたしの心に、なんだか心臓がキュッとしまったような、切なさが体を駆け巡る。そして、顔がニヤニヤしていくのが、止まらない。
「...ルビー、なんか可愛か」
「...煩いよ」
そういって、彼はあたしを押し倒してきた。あたしの耳元で、ボクは態度で愛を示す方が好きなんだからと囁きながら。
それはね、好きって意味
あとがき
ツンデレルビーが書きたかった。上手く、表現できているかは、微妙。ってか結局いちゃいちゃタクティクスかよ!
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