short novel
☆Let's Search For Tomorrow
※これは物語パロになります。パロにしている作品はニコラス・ケイジ主演、ブレットラトナー監督作品"THE FAMILY MAN"日本語だと"天使のくれた時間"というお話のパロディーになります。二人にあうような感じに若干アレンジしていますが、大筋は同じです。
とりあえず、あまり雰囲気を崩さないように頑張ってみました。あと台詞も。
あらすじ
コガネシティで成功をおさめ、高級マンションに住み、フェラーリを乗りまわす。誰もがうらやむ人生を走り続けてきたルビー。そんな彼の前に、クリスマスの夜、不思議な少年が現れ、"煌めき"をみせてやるといわる。それは、"もう一つの人生"ーーー13年前に飛行場で別れたはずの恋人、サファイアと結婚し、洋服のクリーニングをしながら、ミシロで二人の子供をやしなっている平凡な"ファミリーマン"としての人生だった。戸惑いながらも次第に、成功をつかむことしか頭になかった自分の心に、人間らしい素直な感情が芽生えてくるのを感じるルビー。
そして、今までの自分の人生には愛がなかったことに気付いたのだが...
*****
「なんだって!」
ルビーは叫んだ。目の前には自分をこの"煌めき"と称された不思議な時間に導いた少年、エメラルド。彼が驚いた理由、それはこの、サファイアと過ごす愛に溢れた素晴らしい人生が、今夜限りで終わり、お前はいつもの、コガネシティで成功を手にしただけの現実の人生に戻されると言われたからだ。
これは天使の自分が見せている「夢」だ、と。
「これはルールなんだよ。お前は今まで自分に何がなかったのか、理解した。今までの自分の人生に愛がなかったことにね。答がわかったから、お前は帰るんだよ」
「君にボクの人生をめちゃくちゃにされる権利はない!ボクは元の世界には帰らないぞ!」
エメラルドを睨みつけ、叫び続けるルビー。しかし、エメラルドは静かに諭すように、いった。
「ルビー、"煌めき"ってのは一瞬のことだ。永遠には続かない」
この時間は終わるのだ、と。そうだと頭でわかっても、諭されても、心はその事実から目を背けたがっている。
「...ボクはミシロの家に帰る、子供達が、サファイアが待ってるんだ」
そういって去っていったルビーをエメラルドは悲しげに見送った。
*****
家に帰ってきたルビー。彼は子供達にキスをして、サファイアと自分の寝室に入る。ベッドには本を読んでいるサファイア。
「おかえり、ルビー」
「ただいま、サファイア」
「...どぎゃんした?ルビー。そんな顔して」
サファイアはとても真剣な顔をして、自分を見つめてくるルビーに?マークを浮かべる。ルビーは彼女の手を握って、ベッドに腰掛ける。見つめ合う、二人。ルビーが口を開き、自分はこれから何処かに消えてしまう...お別れをしなければならない、といった表情をして、言った。
「ねえ、サファイア、約束して。ボクを、今のボクを忘れないで。この一瞬のボクが、どんなだったかを。そのイメージを心に刻みつけて、決して忘れないで」
「...大丈夫?ルビー」
サファイアはこの"煌めき"の中の人間である。よって、いきなり「自分をわすれないで」などと言い出した自分の夫、ルビーが何故こんな約束を持ち掛けてくるのが全くわからなかった。だって、自分達は明日も明後日も、ずっと一緒にいるではないか。ルビーの真意など彼女には全くわからない。
ルビーは続ける。
「お願いだよサファイア、約束して。君に約束してもらえないと、全てが幻になってしまう。そんなのボクは堪えられないんだよ」
真剣な、でもどこかひどく切ない顔のルビー。何かあったのかもしれない。でも、
「...わかったと。約束する、約束するったい。ルビー。あたしは今のルビーを絶対、忘れないったい」
「ありがとう」
安堵の笑みを浮かべるルビー。サファイアは、また疑問に思ったが、もう夜の11時。普通なら眠る時間だ。今は何も言わないけれど、きっと明日になったらどうしてこんなことをしたのか教えてくれるだろう。そうサファイアは思った。
「ルビー、もう寝たほうがよか、ベッドに入るったい」
ルビーにベッドに入るよう促す。しかし、彼は「NANAの散歩がまだなんだ、いってくるよ」といって外に出ていった。ルビーは眠りに落ちないよう、努力したかったのだ。それが終わって家に帰ってきても、椅子に座り目を開け続けた。なぜなら、眠ってしまったら...終わってしまうとわかっていたからだ。
この愛しい彼女との時間が終わってしまうことが。
しかし、睡魔が襲ってくるのは防げない。ルビーはいつの間にか眠りに落ちていた。
*****
起きるとそこはコガネシティにある、自分の部屋だった。うなだれるルビー。ああ、帰ってきてしまったのだ、と。プルルルルと電話が入る。相手は部下のミツル。
『社長、おはようございます。客様がお見えです。あと今日のご予定は...』
「...わかった、すぐにいくよ」
ベッドから起き、身支度を整える。そして、エレベーターにのり、フェラーリで会社に向かう。その表情は憂鬱だ。そう、自分はこの人生を選んでしまったのだ。愛より成功を選び、今だに心許せる愛する相手もなく、たった独りっきりの、むなしい人生を。
高層ビルの最上階にある、自分の会社のデスク。重い足どりで椅子に腰掛ける。
「今日はベルリッツ様との会合のになります。あとはいつも通りです。あ、実は今朝方、社長の昔の友人という方からの伝言がありまして...サファイアという方なのですが、お渡ししたいものがあるので今日の夕方までに自宅に来てほしいと...どうなさいますか?」
「!サファイアから?」
ルビーは驚いた。だって彼女は夢の中の人物ではなかったのか?そう思ったのだ。しかし、確かによく考えれば、あれは、あの"夢"は13年前に飛行場で自分がシンオウにいかなかったら...という所から始まっていた。だから現実の世界で生きていることはわかっていても、まさかこんなタイミングで連絡がくるとは思ってもみなかった。もしかして、彼女もあの夢を見ていたのかもしれない、そう思うとルビーはなんだか胸の鼓動が高まっていくのを感じた。
「ミツル君!ベルリッツさんを少しだけ待たせておいてくれないか?物を受け取るだけなら、そう時間はかからないだろう。今いってとってくるよ。運転手に彼女の自宅の住所を教えておいてくれ!」
「ちょっ社長!」
そういってでていったルビーをミツルは唖然とした表情で見つめていた。
*****
意気揚々とした気持ちでサファイアの自宅に、ボクはついた。しかし、なんだか騒がしい。たくさんの物がトラックに運ばれていく。怪訝に思ったけれど、とりあえず近くの人に断りをいれて、中にはいる。そこには、テキパキと指示をだしている、サファイア。彼女がこちらを見る。そして、とても驚いた表情をとる。
「ルビー!まさか来てくれるとは。忙しいと聞いていたし...久しぶりやね、元気にしてた?」
「うん、君も元気そうだね」
「あたしは何時でも元気ったい」
そういって彼女は笑う。夢のことを話そうとしたけれど、他にどうしてこんなに荷物が散乱しているのか、不思議に思っていたので、彼女に尋ねた。
「どうしてこんなにダンボールがたくさんあるんだい?」
「そんなの引越しの真っ最中だからに決まってるったい!」
「どこに?」
「カントー!」
なんだって?ボクはそう思った。カントーはジョウトからは遠いではないか!
「カントーだって?どうして!」
「カントーのタマムシ大学に教授として勤めることになったん。父ちゃんが推薦してくれたと。あ、ちょっとまってルビー、渡したいものを探すったい」
サファイアはクルリと向きをかえて、ガサゴソと何故か荷物を探しだす。そんな、せっかく会えたのに、もういなくなる、だって?彼女は自分と同じくあの夢をみたから呼んだんじゃないのか...と僕はがっかりした。
「あ、あったったい。ルビー、これあんたの私物。わざわざとりにきてくれてよかったと。実はあたし今夜の便でカントーにいくんったい。ばってん、今日会えんかったら持って行かねばならんかったったい」
「今夜!?何時!?」
「へ、7時だけど、なしてそんなに驚いとる?」
ボクは動揺を隠せない。引越し、カントー、しかも今日の夜には飛行機に乗る!?意気揚々とここにきた自分が惨めになっていく。なんだかか本当に馬鹿みたいだ、そう思った。でも...
「ねえ、サファイア。君はもし、ボクがあの時、シンオウ行の飛行機に乗らなかったらって考えたことはない?」
「...ルビー」
「きっと今頃ボクらは...」
ーーープルルルル、プルルルル!
携帯が鳴り響く。ボクのだ。仕方がなく、電話にでる。
『社長!物をとってくるだけなのにどうしてこんなに時間がかかっているんですか?ベルリッツ様がお怒りです!早く帰ってきて下さい!』
ミツルの焦った大きな声がサファイアの耳にも入ってくる。
「な、ルビー!早くいったほうがよか!あたしは他に行かなきゃならんとこあるったい!カントーに来ることがあったら遊びにくるったい。じゃあ、元気で」
そういって荷物を、ボクの両手にポンッと置くと、足早に、まるで逃げるように部屋をでていってしまった。ボクはそれを呆然と見つめる。携帯のミツルのあわてふためく声。ボクは彼に一言いって電話をきり、会社に向かった。
*****
会合は失敗に終わってしまっていた。あまりに待たされたベルリッツ宝石店の令嬢、プラチナがカンカンに怒り狂い、帰ってしまったのだ。しかも「もうあなたがたとは取引をいたしません」と会社にとってもひじょうに悪い状況で。ボクは自分が引き起こしたことを社員に謝り、彼女を説得すると約束したが、心ここにあらずだった。そして今日やるべき他の仕事を終え、自宅に戻る。サファイアから貰った自分の私物をぼんやりとした気持ちで見る。ふと、そこに裏返しの写真が入っていることがわかり、手にとる。
その写真には幸せそうな、13年前の自分と、サファイアが写っていた。にっこりとこちらを向いて、笑っている。頭の中にあの出来事が色鮮やかに蘇り、駆け巡っていく。ボクは力強く、未来を見据え、決断した。
「サファイアに、会いに行かないと!」
時間はまだ6時。車で飛ばせば、まだ間に合う。そう信じて...
*****
ボクは飛行場の中を走る。もうスピードで、全力で。車を道路に止めた時、ここは駐車禁止だ!と言った声も無視して。飛行機にのって何処かに向かう家族だろうか?笑い声が頭の中に響く。
確かに、あの夢は、あの"煌めき"は自分の中にまだ存在し、ボクのこの想いを激しく燃やし続けているのだ。
人混みを掻き分け、搭乗口にでる。そこに、カントー行の便にまさに乗ろうとしているサファイアを見つける。
「サファイア!」
大きなボクの叫び声に彼女が気づいて振り向く。回りの人達もだ。サファイアが唖然とした表情をとる。
「いかないで!飛行機にはのらないで!」
「ルビー?」
「お願いだよ、コーヒーを飲むだけでいい。それ以上のことは望まないから!カントー行の便はまだある!だから!」
サファイアがボクの方にむかって、怪訝そうな顔をしながら、近づいてくる。
「ルビー、ここで何しとるん?」
そして、向かい合う、ボクら。一瞬の沈黙ののち、彼女から言葉がはっせられる。
「...許しがほしいん?あれはもう何年も前の話ったい。とっくに許しとる。あたしは大丈夫ったい。そりゃああの時、シンオウ行の飛行機に乗ろうとしたルビーを、その場で引き止めたのに、いってしまったあんたをみたときは、すごく辛かったと。心が痛んだと。でも、乗り越えて、立ち直って前進したったい。だから、あんたにも前に進んで欲しい。それでよか?悪いけど、あたしはもう行かんと。すまんち」
そういい終わるとサファイアは後ろを向いて、搭乗口の方にいってしまおうとする。
僕は回りに人がいることも忘れ、ひたすら彼女に向けて、愛を叫ぶ。
「ボクらはミシロに住んでる!」
サファイアが振り向く。こちらを見る。
「子供は二人、ガーネットとアクア!」
愛しい子供達の笑顔が心の中に色鮮やかに蘇ってくる。あの幸せな表情が、ボクの心を今でも照らし続けている。
「ガーネットはコンテスト演技が下手だけど、一生懸命練習してる。すこしませてるけど、なんでもはっきりと言えるのは利口な証拠だ!あの子が笑うと...っ。アクアの目は君にそっくり。まだ話せないけど、絶対に頭がいい。目をパッチリと開けて、いつもボクたちをみてる。その顔に表れてる。新しいことをどんどん学んでいるんだって。奇跡をみていたんだ、ボクは」
サファイアが少し呆れたように肩をすくめる。でも、視線はそらさず、話を聞いてくれている。
「家は汚いけれど、ボクらのものだ。あと残り3818回でローンも終わる。君は、きのみの種類を子供達に教える講師をしている。無料でだ。仕事したって儲からないけれど、君は全く気にしてない」
ボクは彼女の方へ一歩ずつ近づいてく。
「ボクたちは結婚して13年もたってるのに、深く愛し合ってる。"愛してる"って言わないと、触れさせてもくれない」
回りには飛行機に乗ろうとする人達がたくさんいるはずなのに、ボクの目に写っているのは、サファイアただ一人だけ。
「ボクは歌をささげる。いつもじゃないけれど、特別な行事には必ず。ボクらはいくつもの驚きを共有し、共に犠牲も払ってきたけれど、それでも一緒にいる。君は、ボクよりいい人間だ。一緒にいると、ボクまでいい人間になれるんだよ」
彼女はもう、目の前。すこし潤んだ藍色の瞳に、ボクが写りこんでいる。
「あれは、みんなただの夢だったのかも知れない。クリスマスイヴの孤独な夜が見せた、幻だったのかも。でも、ボクには何より現実に思えたんだ」
ボクは彼女の瞳を捕らえて、離さない。
絶対に。もう、二度と。
「今、君がいってしまったら、永遠に消えてしまう」
あの輝かしい、日々。忘れられない、笑顔。ひどく幸福な、人生。
「...ここで別れても、ボクらはやっていける。でもボクは、あの二人の日々を選びたい。いや、ボクたちは選ぶ」
最後の言葉は口調を強めて。
「お願いだ、コーヒーを一杯だけ。カントーは逃げたりしない。だから、お願いだ。いかないで」
沈黙、時が止まる。二人の心が、つながっていく。
「...わかったと、ルビー」
自然とぼくたち二人は、笑顔になる。彼女と手を繋いで、歩く。二人の未来に向かって。あの時YESと答えていたときの二人を見つけに。
あとがき
とりあえず、この映画大好きです。もう、みるたんびに泣ける。本当は全部エピソード詰め込みたかった...子供のシーンとか...でもそしたらえらいことになるよ...これも無駄に長いけど。
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