short novel
※共食い、共殺し、共愛し
新婚初夜と服ネタ。たぶん...15禁くらいかと。エロいっつうより、イタイ。
彼は羊の皮を被った狼でした。あたしなんかより、ずっとずっと、野蛮な生き物でした。
「すごく...いい式だったと...」
あたしは一人ベッドの上で、今日の、ルビーとあたしの結婚式を思い出していた。たくさんの報道陣は全て閉め出し(だってあたしは今やホウエンチャンピオン、ルビーはトウカジムリーダー兼コンテスト第一人者。二人揃ってかなりの有名人だから、こういったものがまるで甘い砂糖菓子を見つけた蟻のようにたくさん群がってくる)身内だけで、執り行なったからかも知れない。後輩が心を込めて作ってくれた料理。先輩達が飾り付けてくれた小さな湖畔に立つ教会。あたしはルビーが作った真っ白なウエディングドレスを着て、真っ赤なヴァージンロードを歩き、永遠の愛を誓う...神様の前で。本当にあったことなのに、夢のように感じてしまう。
「ルビーがあたしにキスしてくれた時...幸せすぎてこのまま死んでしまうかと思ったと...」
まるでまだ夢の中にいるようで、思わず頬を自分で引っ張ってしまったあたし。もちろん、ちゃんと痛い。
「...ルビー、まだかな...」
ちらりとあたしは寝室から見える、シャワールームに視線を向ける。実は、今あたしが一人でベッドの上にいるのは、シャワーを浴びにいったルビーを待っているからなのだ。中は曇り硝子になっているので、よくは見えないが、でも彼の肢体が動いているのがわかる。細身だけれども、筋肉が程よくついた、均整のとれた美しい身体。男の人のカラダ。
「...なんだか急にすっごく恥ずかしくなってきたったい...だって...あたしだってわかると。今夜、あたしはルビーと...」
驚くなかれ。実はあたしはまだその...ルビーと体を重ねる行為をしていないのだ。今までに一度たりとも。それは、ルビーが「ボクはね、まだ身体のちゃんとできてない君を抱くつもりはないんだ。あまり若いうちにそういったことをすると、良くないって聞いてね。今は君が、ボクの作った服を着てくれるだけで、ひどく嬉しくなるんだよ。それにさ、ヴァージンロード、ヴァージンで、歩きたいくない?」と言ったことに起因する。この時あたしは、ルビーは本当になんて優しいんだろう、と思ったものだ。
ルビーはそうやっていつもあたしを大切にしてくれていた。でも、今夜はちょっと違うことぐらい、それくらいはあたしにだってわかる。
「あう...なんだか緊張もしてきたと。ルビー...」
「ボクがどうかしたの?」
「!」
ルビーがシャワーを浴び終わって寝室に入って来ていたのだ。黒髪はまだ濡れていて、ポタポタと雫が下に落ちていく。バスローブをきてはいるが、胸元が少しはだけていて、ひどく色っぽい。あたしは思わず顔を背ける。
「ボクが、どうかしたの?サファイア」
「...なんでもない。ただ、待ってたと」
「そんなに淋しかったの?それなら一緒にシャワー浴びればよかったのに」
「な!...違っ...くないったい...!」
あたしはベッドから起き上がって、ルビーに飛び付く。彼はあたしを受け止めると、優しく抱きしめた。
「ふふっ。珍しく、素直だね」
「だって...」
「いつも、それくらい素直だと、ボク助かるなあ。君は、いっつもあまのじゃくなんだもの」
「それは、ルビーも同じったい...」
なんだか可笑しくて、笑みが出るあたしたち。ルビーは、あたしを軽々と抱き上げる。いわゆるお姫様抱っこをして、ベッドに優しく下ろし、自分は端に座る。
「ねえ、サファイア」
「ん?何、ルビー?」
「話しておきたいことがあるんだ。これはね、ボクが君にずっと隠し続けてきたことでね、今日やっと言えそうなんだよ。だから、聞いてくれるかい?」
隠し事!?まだルビーには隠していることがあったの?あたしはちょっとだけ悲しくなった。だって、好きな人に隠し事されるのは、辛い。
「それはね、ボクがどうして君にたくさん服を贈っていたかってことでね。それを通して、ボクは君に予め"予約"をいれていたんだ」
「予約?あたしに服を贈ることが?どういう意味ったい?」
あたしは謎に包まれた。予約って?いったい何の?
「あと、サファイア。ボクの服好き?」
あたしの服は今着ているこのネグリジェも含めて全て彼のお手製だ。だってあたしは...幼少期は違うけど、再会した時は蔦と葉っぱの服しか持ち合わせていなかったから。そのあとの服は全部、ルビーが作ってくれていた。たまに、フリフリのスカートとかも作ってたけど、たいていは機動性や通気性に優れた、あたしにあった服だった。
「うん!勿論ったい!動き安いし、なんだか心がポカポカすると。きっとルビーの心がこもってるんやね。今までいっぱい貰ったけど、全部取ってあるったい!」
「ふふ、何着あるか数えたことある?」
「えっ?いっぱいありすぎて数えたことなかと...ルビー、たくさん作ってくれたから」
あたしがこう答えると、なぜか彼は今までに見たことのない、真っ黒い笑みをあたしに向けたのだ。それはまるで獲物をその眼に捕らえ、今にも襲い掛かってきそうな野生の狼のようで、あたしは身が竦んだ。
「ルビー?」
「...じゃあね、サファイア。隠していたことを教えてあげる。男が女に服を贈るのはね、その服を自分で脱がしたいからなんだよ。つまり、"予約"っていうのは君とセックスする回数のこと。どうやらサファイア、君はボクと数えきれないほどセックスしなくちゃいけないみたいだね」
そう言い終えると、ルビーはその笑顔のまま、あたしに覆いかぶさり、襲い掛かってきた。キスは今までしてもらっていたような優しいものではなく、乱暴で、息が苦しくなる激しいもの。余りに長いので、意識が遠退きそうになる。身体をルビーの手が這う。ネグリジェが引き裂かれ、あたしの中身が現れる。そして、あたしはいったいルビーに何回殺(愛)されたのかわからない。彼は舌なめずりをして、首に、胸に、心臓に牙を立てて噛み付き、バリバリとあたしを食べていく。身体に残る紅い、跡、跡、跡。腰に鋭い爪が食い込み、引き裂く。あたしの秘部は、自身のそれで激しく、激しく突き上げられ、それはまるで勝利の咆哮のようだった。
彼はまさに獲物を仕留め、それを貪る狼だった。しかもただの狼じゃない。羊の皮を被った狼。普段はまるで草食動物のように装い、本当は...肉しか食べない獣。ルビーは、優しかったルビーは、皮の部分で、本質は、あたしなんかよりずっとずっと野蛮だったのだ。
「...本当...!君は可愛いよ!ボクが服を...っ贈り続ける...その意味を...知らずに...!笑顔...!で貰い続けて...!っくれたんだからさ!」
...いったい、もう幾度達したのだろう。ベッドはぐちゃぐちゃ。あたしも、同じくらい、ぐちゃぐちゃ。あたしはいつの間にかルビーに四つん這いにされていた。尻を突き上げられ、ルビーがあたしに跨がったような恰好になっていた。まるで本当の狼の交尾のように。ルビーの勢いは衰えを知らないようで。ガンガンと、彼のそれがあたしの最奥を貫き続ける。
「ふぁ...やっ...あっ...知らんかったし...!そんな邪な...理由があった...なんて!あっ..知らな...やっ!ルビー!」
こんなに目茶苦茶にされているのに、あたしが考えているのは、ルビーのことだけ。あたしも狼なのかもしれない。
「サファイア!いっぱい...いっぱい...殺(愛)してあげるからね...君が...嫌というほど...!愛(殺)してあげる」
愛されているのか、殺されているのか、わからない。もう、どっちも同じことのよう。
「っつ!...野蛮...人っと!あ、あ、あっルビー!」
あたしの頭の中が絶頂を受け、真っ白になる。一瞬、気を失い、カクッと体が倒れこみそうになっても、ルビーは自身を抜いたりせず、今度はあたしの体の向きをクルリと挿入したまま回転させ、向き合う。
「それは...今の...!ボクにとっては...!っ最高の褒め言葉だよ、サファイア」
そこにいたルビーは、あたしに殺(愛)されたルビーだった。あたしは嬉しくなって、二人が混ざり合い、できた一匹の獣が歓喜の雄叫びをあげるのを頭の中で聞いていた。
彼は狼でした。あたしはむしゃむしゃと彼に食べられて、なくなっていきます。でも彼も、実は狼のあたしにむしゃむしゃと食べられていました。二匹は共食いをしていたのです。最後に残ったのは、お互いをペろりと食べつくし、混ざり合った一匹の獣でした。
あとがき
これって、エロいんだろうか?謎。あと、ルビーさんは草食じゃなくて、装飾な気がする。笑
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