short novel
隠恋慕(剛白)
私の気持ちはもう隠れてはいられないようなのです
「お嬢様ーお嬢様どこー?」
そう何度もおっしゃっても、私はこの木陰から絶対にでていきません!ダイヤは私のことを守るといっておきながら、息がつまりそうになるほど苦しくなるほどに抱きしめて、そしてあのようなキ...キキキスを...思い出しただけでも顔のほてりが止まらなくて熱くなってしまいます。
真っ赤に染まっているに違いない私の頬。恥ずかしくて絶対に出ていけません!
「...いきなりしちゃったのは謝るよ。でもね、お嬢様も悪いんだよ?あんなうるうるとした瞳でオイラの事を見つめてくるんだもの」
ダイヤは突然現れた刺客から私を瞬時に庇い、怪我を負ってまでも守って下さったのです。それは私のボディーガードであるからには最優先事項、果たさねばならない任務ですからいつものことですし、普段の私でしたらそこまで気にとめなかったでしょう。
しかし今回は事情が違うのです。
それは私が貴方に恋をしていることに気付いてしまったから。私より一回りほど大きなその背中に、心を奪われてしまったのです。ボディーガードというよりまるで姫に忠誠を誓う騎士のように見えてしまったのです。
ダイヤに"男性"を感じてしまった私は、自分の冷静さが消えていくことを知って戸惑いを覚えました。
そして彼との思い出が洪水のように溢れて止まらなくなってしまったのです。
怪我をして痛いはずなのに「大丈夫?お嬢様」と転んでしまった私に手を差し延べて、不安にさせないように満面の笑顔で気遣って下さって...そうやっていつも大切にしてくださる貴方に気付いてしまったのです。ときめきを隠せなくなってしまったのです。
貴方の瞳を見つめずにいられるでしょうか。
安堵を浮かべた表情が真剣なものに変わった瞬間抱きしめられ、キスをされた私は貴方突き飛ばして逃げてしまった訳ですが、どうしてこんなに胸の中がざわめくのでしょう。
逃げなければよかった、もっと抱きしめてほしいなんて...でも私はもう優しい丸い心をもつ貴方に自分がどういった態度を取れば、どんな顔をすればいいのかわからないのです。
だから隠れるしかないのです。
「見つけた、見つけたよ!お嬢様って!どうして逃げるのー」
「まだ貴方は私を本当の意味で見つけた訳ではありません!捕まえてはいないのですから」
「ちょっとお嬢様待ってよー」
誰が何と言おうと隠恋慕はまだ続くのです!
なんかかくれんぼって隠恋慕じゃね?って思ったらポッとできた。唐突に気付いたのよ、みたいな。
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