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short novel
MY PRECIOUS
※ルサの二人の幼少期の出会いの仕方を捏造してます。















花畑の中、ボクは美しい人にであった








「ルビー、宝探しをしないか?」

「うん!一体何を探すの、父さん!」

父さんが笑いかけてくれた、それだけでボクは、なんだがすごく嬉しくなった。父さんはね、バトルもすごく強くて、かっこいいから、ボクの自慢なんだよ。実は先週から父さんの夢、ジムリーダーになるための試験があるからって、家族総出で出掛けてて、今ホテルに泊まっているんだ。父さんを近くでいっぱい応援できるように。

そこは凄く綺麗で静かなところで、コガネシティとは全然違っていて、目に入ってくるものも、耳に聞こえてくるものも、すべてが新しくて、楽しかった。だから父さんがそのゲームを持ち掛けてきたことが、すごくワクワクした。まるで、ママが読んでくれた絵本の主人公になれたみたいに。

「このハンカチの持ち主を探すんだ。NANAやCOCOを使えばすぐにわかるだろう」

「人を探すの?物を探すんじゃないの?」

「このハンカチの持ち主は私の親友の宝物なんだ。だから宝探しでいいんだ」

ハテナマークは消えないけれど、ボクは言われた通り、白いレースでできたハンカチを手にとって、NANA達に見せてあげる。くんくんと臭いを嗅ぐと、ワオンと一声いって、走り出したので、ボクはそれを追い掛けていった。



*****



「...こんな変なことをせずに、普通に会わせてあげればよかったじゃないか...」

ルビーが走り去っていく方向を見つめながら、センリはルビーに自分達がいることを知られないよう、物陰に隠れていた自分の妻と親友のオダマキ博士に少し呆れながら言った。

「あら、ああやって二人きりで会った方が素敵じゃない?あなた」

「センリ、小さいとはいえ男女なんだ。こんな出会いがあってもいいだろう」

そう、この"宝探し"と称された、子供達の初めての出会いの場をセッティングしたのは、実は彼等なのだ。男女っていってもまだ6才なんだぞ?とセンリは思ったのだが、親友があまりにも笑顔でわらっているので、腹いせにある冗談を口にした。娘をもつ父親にしかわからない、ある特有の悩みを見据えて。

「...お前の娘が将来、ルビーを選んだらどうするつもりなんだ?」

「なーに、ルビー君なら大丈夫だ!センリ、お前の息子なんだからな!」

ガハハハハと博士はセンリの肩を叩きながら、笑顔でそう言った。自分の妻も口に手を当てて、クスクスと笑っている。まあいいかとセンリはそれ以上は何も言わず、子供達のことを思いながらも、夢を掴みとるために決意を新たにした。



*****



トンネルみたいに長い森の道をボクは走っていた。NANA達は後ろを追い掛けているボクをちらりと見ながら、タタタッと足を止めずに駆けていく。すると、前方に光が差しているのがわかって、森の道の出口が見えてきた。そこをくぐると、すごく広そうな開けた場所にでた。少しだけ暗い所を走っていたので、ちょっと眩しかったから、思わず瞑ってしまっていた目を開ける。

「うわぁあ!すごくきれいなお花畑!!!」

そこには色とりどりの花がいっぱい咲いていた。丸くて黄色が可愛い蒲公英や、にょきっとした土筆、青くてちっちゃな大犬の陰嚢、たくさんの色がある春紫苑、そして幸せを運んでくれるのよってママがいっていた白詰草。春の訪れを告げる花達がボクを満面の笑みで迎えてくれたんだ。つられてボクも笑顔になる。

すると、NANA達がその中から、ワンワンと呼んでいるので、そこに近づいていった。近くまでいくと、ボクは花畑の中で眠っている誰かを見つけた。

「...この子が?」

父さんが探せっていった宝物はまるで絵本にでてくるお姫様みたいな、可愛くて綺麗な女の子だった。薄い茶色の髪は、風をうけてサラサラとしていて、太陽の光が当たってキラキラとしている。フリフリのすっごく女の子らしくて、愛らしい青色のお洋服は、ふんわりとしていて、彼女にとてもよく似合っていた。長い睫毛に縁取られている瞳は今は閉じられていて、すやすやと寝息が、聞こえていた。

「NANA、COCO。この子が宝物なの?」

そう2匹に尋ねると、パタパタと尻尾を振って、そうだよ!と教えてくれた。ボクは彼等の頭を撫で撫でして、彼女を見つけてくれたことを褒めてやる。

「うーん...ここで眠っていたら、風邪ひいちゃうよね...」

ボクは彼女を起こしてあげようと、顔を近づけて、肩を優しく揺らしながら、耳元で囁く。

「おーい、宝物さん!風邪を引いちゃうよ、起きて!それに渡したい物もあるんだ。だから起きて」

すると、ううんと声がして、彼女が目を擦りながら、体を起こしていく。閉じられていた瞳がゆっくりと開いていく。その色はまるで宝石みたいな、すごく綺麗な青だった。この時、父さんが彼女のことを宝物っていったのがなんだかわかった気がした。

その青い瞳とボクの赤い瞳が出会う。少し不思議そうなそんな顔が目に映る。でも、すぐに彼女はなぜか少し怒ったような、そんな顔になって、ボクに突っ掛かってきた。

「遅い!わたし待ってたんだよ?あなたを、赤い瞳の冒険家さんを!」

「ふえ?」

待っていた?ボクを?ハテナマークが頭の中にぐるぐると回る。

「父ちゃんが、わたしの青い瞳が宝物の宝石みたいだから、今日赤い瞳の冒険家がお前を探しにくるよって。だからここで待ってなさいって」

「そうだったんだ...ごめんね。ええと、ボクルビーっていうんだ。キミは?」

「わたし、サファイア!よろしくね、ルビー君!」

サファイアちゃんは花畑の花達に負けない笑顔をボクの前で咲かせた。なんだか、すごく恥ずかしくなる。顔もじーんと熱くなっていく。それを隠したくて、顔を下に向けながらハンカチを取り出して渡す。

「ええと、このハンカチ、サファイアちゃんのなんだよね」

「うん!ありがとう、ルビー君」

ふと目を向けると、そこにはまたサファイアちゃんの満開の笑顔が咲いていた。すごく、可愛くて綺麗で、素敵で。でもそれだけじゃ今の彼女を表すには何か足りない気がして。幼いボクの頭の中には、今の彼女に似合う言葉がわからなくなる。

そんな時、ふと思い出したんだ。父さんがママに言っていたあの言葉を。それを口に出してサファイアちゃんに伝える。

「サファイアちゃんは、すごく綺麗で、美しい人だね」

すると、みるみるうちに彼女の顔が真っ赤な薔薇のお花みたいになっていく。手を頬にあてて、すっごく恥ずかしそうにする。でも、なんだかとても嬉しそうにも見えた。

「そんなこと...今まで誰にも言われたことない...ルビー君、なんだか、冒険家さんじゃなくて、王子様みたい...かっこいい」

「へへっ、じゃあサファイアちゃんはお姫様なんだね!」

そういってボクはサファイアちゃんをギュッてした。なんでそんなことをしたのかよくわからないけど、多分父さんとママの真似をしたかったんだと思う。あと、絵本の中の王子様とお姫様も最後はこうしてギュッてしてるから、いいかなって。



*****



「はぁ、全くキミは何処ででも寝れるんだね...」

ボクとサファイアは今日、シンオウ地方のソノオタウンというところに来ていた。ここは年中無休で色鮮やかな花が咲き乱れ、観光者達の瞳を魅了する。美しさ史上主義なボクは是非訪れてみたいと、テレビを見たときに何度も思ったのだ。

そして、その願いが叶い、今サファイアと一緒にここにいる。しかし、彼女はボクが飲み物を買ってくるよ、と目を離した隙に、花畑の中で眠ってしまっていたのだ。全く野生人なんだから。

でも、これは初めてボクらが出会ったときの情況そっくりで、寝顔を見ながら、過去の記憶が呼び覚まされるを、心の中で感じていた。

「風邪をひいちゃうかもしれないし、起こしてあげないとね。飲み物も渡さないと...ふふっ本当にあの時みたいだ」

笑みを浮かべ肩を揺らしながら、顔を近づけて耳元で起きてと囁く。すると、ううんと目を擦りながら、体を起こすサファイア。青い瞳がゆっくりと開いていく。

再び青い瞳と赤い瞳が出会う。

「...ルビー?」

「全く、キミはその何処ででも眠る癖を直した方がいいと思うよ?いくらキミが自然の恵を沢山うけた野生生物と同じ、頑丈な体を持っているとはいえ、風邪を引かない保障は何処にもないんだからね」

「ルビー!今なんていったと!」

ボクの余計な一言に腹をたてたのだろう。そういって突っ掛かってきた彼女。これも、あの時と全く同じなんで、ボクはお腹を抱えて笑い出してしまった。彼女の呆気にとられる表情が目に入る。

「なしてそんなに笑っとる?」

「...覚えてる?ボクらが初めて出会った時のこと。キミはあの時もこうしてボクに突っ掛かってきたでしょ、遅い!って。今キミはその時と全く同じことをしたからさ、なんだか、可笑しくて」

すると、彼女も思い出したのか、瞳が細められ、ひどく懐かしいといった表情をとる。

「...そやね、あたしは父ちゃんに言われて、花畑であんたを待ってた...でもすぐにこないんで、待ちくたびれて眠ってしまったと...」

「ふふっそんなキミをボクは起こしてあげた。ね、同じでしょ?」

「そうったいね!同じったい!」

ボクの瞳に映るもの。それはあの時と変わらぬどんな花にも負けない笑顔。しかもそれは今ボクのためだけに咲いていて。世界中で1番大切な宝物がそこにあった。

ボクの胸の中に咲き誇る愛しさが、全身を駆け巡っていく。

そして、あの時の言葉が心の中によみがえる。

「...サファイア、覚えてる?あの時ボクがキミにいった言葉」

「?」

サファイアの頭上に一瞬クエッションマークが浮かんだと思ったら、みるみるうちに顔があの時と同じ薔薇色に染まっていく。どうやら思い出して恥ずかしくなってしまったんだろう。サファイアは顔を下にして、もじもじしていた。

ボクはそれに少し言葉を足して、愛を込めて、彼女の為だけにその言葉を捧げる。

「サファイア、キミはボクにとって世界で1番綺麗で、美しくて、愛しい人だね」

あまりの嬉しさによるものなんだろう。ボクに飛びついてきたサファイア。彼女を腕の中に閉じ込め、右手を頬にそえて、上を向ける。青い瞳は少し潤んでいて、本当に宝石のように見えた。

今は抱きしめるだけじゃ足りないボクは、サファイアの唇に自分の唇をそっと重ねた。それは永遠の愛を誓う儀式そのものだった。











花畑の中、ボクは愛する人に出会った















あとがき

幼少期ネタそのAサファイアがなんか勝ち気っぽいね。PRECIOUSって言葉がお気に入りだったり。あと、冒頭の言葉は好きな映画から頂きました。

ってか花、花いいすぎ!咲く、咲くいいすぎ...ボキャブラリーが足りないよ!泣

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あきゅろす。
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