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short novel
♪ZINN DOLLS
オリパロになります。ルビーが悪魔でサファイアが天使になります。苦手な方バック。ええと、切なさめざしてみました。死ネタ。ファンタジーですけど。














『片足の無い錫でできた兵隊さんは、バレリーナに恋をしました。彼女も自分と同じく、片足がなかったからです』




七色の水の湖、水晶の木々が生い茂り、空中に浮かんでいる小さな不思議な島。ここは、天界と魔界の境目。上空には白の世界が広がり、島から下の下界には黒の世界が広がっていました。そして、天界に属する天使は人間を幸福へ導く為に、悪魔を滅ぼさんと戦い、魔界に属する悪魔は自分達が人間に変わって世界を支配するためにと、天使と戦いを繰り広げていました。

これはそんな中でも、2人の愛を貫いた、1組のある悲しい恋人達の物語...












「あ、あいつまたあそこにおる...」

空を飛びながら、サファイアはそうぽつりと呟いた。彼女は天界に属する天使で、この2つの世界の境目には任務で偵察にきていたのだ。しかし、本来なら白いはずの彼女の翼は真っ黒であった。これは生れつきで...仲間達からはまるで悪魔のようだと物心ついたときからずっと差別され続けていた。これのせいで、彼女は出来損ないの天使であると烙印を押されたのだ。

もし心優しい天使、ナギに出会わなければ一生そのままだったかも知れない。

「...でも、あのルビーって奴、悪魔なのにあの蝙蝠みたいな翼は、真っ白ったい...」

彼女の目線の先には、境目にある島の湖畔のほとりで石の上に座っている男の子。彼は魔界に属する悪魔のはずなのに、特徴的な本来なら黒いはずの翼は真っ白だった。もちろん最初この男の子と会った時、サファイアは大いに警戒したのだが(白いとは言え悪魔、つまり敵であったからだ)話を聞いているうちに彼が悪い悪魔(悪魔に良いも悪いもあったのかと、彼女は同時に戸惑いも覚えたが)ではないことを知り、また同年代の友達はサファイアにはいたことがなかったので、仲良くなっていったのだ。

しかし、何故翼が白いのかと問いただしても、なんだか悲しそうな笑みを浮かべ、キミには関係ないよと、決して教えてはくれなかった。

「やあ、サファイア。また偵察かい?」

「...そうったい。あんたは?」

「同じだよ。師匠に言われてね」

サファイアは彼が座っている石から少し離れた場所に腰掛ける。なぜなら、悪魔にもし触れてしまったら、体に電流のようなものが走り、そこが焼け爛れたようになってしまうからだ。これは、悪魔も同じ。触れ合えば、それは痛みしか生み出さないのだ。

「なんか、いつも思うけど不思議やね。あたしたち敵同士なのに、こうして一緒にいて、話しをしとる」

「...まあ、ボクは戦ったりして汚れることが嫌いなんでね。それにこんな辺鄙なところで死ぬのも嫌だし...それに...」

「それに何?」

黙ってしまったルビー。遠くを見ているような、なんだか切なそうな、でもそれでいてすごく真剣な目をして、サファイアを見つめてくる。紅の、悪魔特有の血の色の瞳がサファイアの藍色の瞳を捕らえる。

「キミと一緒にいたいしね、サファイア」

「!」

驚きの表情を隠せないサファイア。しかも、彼は自分に手を伸ばし、触れようとさえしている。

「な!触らんといて!」

そういって、空中に羽ばたくサファイア。顔が赤い。こんなことを言われたのは初めてだったのだ。

「ごめん、ほんの少しならいいかなって。本当、ごめんよ」

微笑を浮かべ、彼は手を下ろした。視線をそらし、なんだか泣きそうな表情に変わる。サファイアは空中に浮いたまま、彼に近寄る。

「なして?なしてこんなこと...」

すると、ルビーは搾り出すような声で告白を始めた。ひどく辛そうな、悲しそうな目をして。

「...それは、ボクの翼が何故白いのかってことと関係があるんだ...ボクはね、サファイア。出来損ないの、力の弱い悪魔なんだ。生まれた時からずっと迫害を受けていた。師匠に拾われていなかったら...それと...本来ボクら天使と悪魔にはないあるものをボクは持っていて...それは、「心」っていって、人間にしか無いもので...それがボクにこうさせるんだ、キミに触れたい、好きだって」

「心?心って人間の、あの「心」のこと?」

「うん」

本来天使や悪魔に心というものは存在しない。天使は神に仕え、悪魔は魔王に仕え、仕事をするものだからだ。ありとあらゆる超能力は与えられていても、感情、つまり「心」は与えられていなかったのだ。自分達に逆らうといった行動を起こさせない為に。彼等は所謂人形なのである。偉大なる存在の為の。

たまに感情を、心を持って生まれてきた者達は...堕天したり、自らの仲間を滅ぼそうとしたりした、と歴史に記されていた。

「なして?どうして悪魔に心があると...」

「それがわかったら苦労はしないよ。寧ろ、それがあるからボクは出来損ないなんじゃないかな...でもね、ボクはキミも同じなんじゃないかって思っていたんだ。だってキミも天使なのに、翼は真っ黒じゃないか」

「!」

サファイアの顔は再び驚きの表情に変わる。まさか、自分にも心があるなんて、と。確かに今思えば、自分と他の天使達はかなり違っていて、彼等がロボットのようにテキパキと行動できても、自分にはそれができずまごついたことがよくあったのだ。

「あたしにも...心があるなんて...知らんかった...」

ルビーの近くに降り立ったサファイア。ルビーは立ち上がり、彼女に近づく。真っ直ぐに見つめてくる紅の瞳から目が逸らせない。

「最初、ボクは心のせいで自分が迫害され、翼が白いのであったら、本当にそれを捨ててしまいたいって思ってた...でも今は、キミに出会えて、心があってよかったなって思ってる。もしなかったら、キミを「好き」になれなかった。こんなに様々な感情、悲しいとか、辛いとか、苦しいとか、楽しいとか嬉しいって思えなかったから。でも...ボクはキミに触れられない。触れたら、キミが傷ついてしまう...もどかしいよ...」

そういって彼女を見つめる。手を伸ばし、触れるようなそぶりをしながら。それは虚しく空をかいただけだったが。

「こんなに、こんなにキミは近くにいてくれているのに、すごく遠くにいるように感じてしまうんだ...」

手を再び伸ばし、頬に優しく触れ、そして唇を近づけ口づけを交わす、そんなそぶりをする。吐息がお互いの唇に触れ、紅と藍の瞳が重なる。でも、見えない厚い壁が、彼等を阻む。

瞳が訴え続ける。切ないよ、胸が苦しくて苦しくて仕方ないよ、と。

どうしてボクらにはできないんだろう、と。

「ルビー...」

「ごめんね、サファイア。混乱させて」

優しい微笑に涙がでてきそうになるサファイア。彼女は思っていた、自分をこんなに想ってくれている、優しい悪魔がいたなんて、と。すると、突然彼女はルビーに抱き着く。ビリビリとした電流がお互いに走り、次にジュウジュウと皮膚が焼ける匂いが鼻に入ってくる。

「熱っ!サファイア、駄目だ!こんなことしちゃ、キミが、燃えて消えちゃうかも知れないんだよ!」

「っいい!ルビーが一緒なら、いいったい!熱くても、痛くても、一緒なら、それでいいったい!」

痛みからなのか、切なさからなのか、いつのまにか大粒の涙を流していたサファイア。ルビーは急に飛びつかれたので、バランスを崩し、石の上から地面に落ちる。しかし、サファイアをしっかりと抱きしめたままだった。2人の体から煙が上っていく。

「抱きしめて!っキスして!消えてもよか、ルビー!」

「っ!サファイア!」

悪魔は天使に口づけをする。途端走る痺れ、激しい痛み。でも止められなかった。触れたいという気持ちのほうが優っていたからだ。服が脱がされていく。もっともっと触れ合いたいと、彼等は人間と同じ罪を冒そうとしていた。それでもいい、と彼等は思っていた、燃え尽きる時は一緒だとわかっていたからだ。

錫の兵隊が恋したバレリーナとともに、暖炉の中で燃え尽きたときも、2人は一緒だったのだから、と。








『最後に残ったのは、紅と藍が混ざり合った、1つの心臓の形をした石でした。それはどれだけ破壊しようとしても、壊れず、永遠に輝き続けました。それは、2人の愛と心そのものだったのです』

















あとがき

アンデルセンは大好きです。

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あきゅろす。
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