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long novel
PRECIOUS
”どうして泣いてるの?”

「ひっくっ、みんな、オレを馬鹿にするんだっ、チビだって。だから、いつもっ、ひとりぼっちなんだっ」

"じゃあ...私達がそばにいてあげる"



*****



海の上を目にも留まらぬ速さで飛んでいる私と兄の心の中は今、たった一人の人間のことで頭がいっぱいだった。その人の名前はエメラルド。昔、ひょんなことで見つけたひとりぼっちの人間の男の子のことを。今はもう彼に人間の兄弟ができたので、別れて暮らしていたのだけれど、今朝、彼が置いていった"テレビ"というものが、彼が行方不明で、安否がわからないと伝えていたのだ。彼が働いていた場所の不気味な映像と、今なお心の中にある彼への思いが、私達を再び人間の世界へ行かせたのだ。

"兄さん!ラルドの気配を探ることはできないの?"

"無理だ。ここは、カントーからはとても遠い...不可能だ。でも、マサラに行けば何かしらわかるかもしれない。人間にはわからないことが。だからラルドの兄弟のところへ向かおう。彼らも私達と同じ気持ちのはずだ"

"ええ、ミシロタウンに行きましょう!確かあそこにはルビーとサファイアが住んでいたはず!"

"ああ、急ごう"

そういって私達はまたスピードを上げて海の上を飛ぶ。ジェット機のような私達の体は、まるで、音速を超えて、光の速さに届きそうなほどになっていた。それに比例して、心の中にはラルドとの思い出が溢れかえっていた。

しばらく飛ばして、陸地が遠くに見えてきたとき、私達は前方に巨大な生き物が凄い速さで飛んでいることに気がついた。銀色で、翼は黒。その背中に誰かを乗せている。その特徴的な髪型、背番号の10。あれは!!!

"ラルド!!"

彼に向かってテレパシーを飛ばす。彼が後ろを振り向く。ああ、間違い、あの、頭に付けた翡翠の宝石に負けないくらいに輝く、彼の瞳。驚いた表情、そして、あの笑顔。

「ラティアス!ラティオス!久しぶり!元気してた?」

ニッと彼が笑いかけてくる。安堵感と同時に何故彼がこの巨大なポケモン、やぶれた世界の王であり、死を司ると私達の中で伝えられているギラティナに乗っているのか疑問に思う。

"ラルド、どうしてお前はギラティナと一緒にいるのだ?彼はやぶれた世界の王で、我々の死を司る存在でもある。それに滅多に人前に姿を現すことはないと聞いていたのだが..."

すると、ギラティナは「ギャッシャアァアァアァアン」と私達に説明を始めた。今世界は危機に陥ろうとしていると。

"なんですって!"

"そんな災いが起ころうとしているのか!"

「...ギラティナ、教えたんだな...ラティアス!ラティオス。オレ、助けられたんだ。ギラティナとアルセウスに。そして、オレを含めた図鑑所持者14人に協力してくれって...世界を救う為に。オレ、ラティアス達にここでまた会えたのって何か絆とかそういうのだと思うんだ。だから、またオレに力を貸してくれないか?」



*****



藍「成る程。そういうことがあったから、エメラルドはラティアス達と一緒に現れたんね。いい友達を持ったとね」

翠「うん。オレ、また会えて嬉しかった。バトルフロンティアの事件が終わったとき、急にいなくなっちゃったし...」

ラア"ふふっ。ラルドったら。約束したでしょ?あなたが'ひとりぼっち'じゃなくなったら、私達はお別れを告げずに、静かに立ち去るわって"

翠「そうだけど...まさか本当にいなくなっちゃうなんて...すこし探しちゃったんだ。ラティアス達のこと。見つかりはしなかったけどさ」

ラオ"私達は南の孤島に帰ったのだ。人間ではいけないところにな"

翠「そうだったんだ...でも、オレ、嬉しかったな。ラティアス達が宝物を、まだ持っていてくれて」

紅「宝物?なんだい、それ」

翠「...ルビー達にはなんか教えたくない」

満「え、どうして?」

藍「あーエメラルド!何隠しとる!」

翠「あーもー!絶対教えない!」

紅「嫌でもいってもらうよ?エメラルド。ボクたちは仲間なんだから」

満「そうだよ!それに気になるよ、そんな言い方しちゃ」

藍「そうったい!とっととはいて楽になるったい!」

翠「うわあぁあぁあ!」

ーホウエン組、ラティアス達の前を去っていくー

ラア"ふふ、宝物っていっても、もう使わないからって、くれた小さなテレビのことなんだけどね"

ラオ"ああ、これを見ていれば、たくさんの人間が喋っているから、なんだか一人ではなくなったようにかんじたんだといって、でも今は私達がいるからとくれた、ラルドにとっては思い出の品だがな。本当は捨てるつもりだったらしいが..."

ラア"そうね、でも当時、まだ私達には人間の物がとても珍しかったから、捨てるならちょうだいって言ったら、くれたのよね。ふふっ初めてのプレゼントだったわ"

ラオ"だが、それのおかげで私達はまたラルドに会えた。感謝しないとな、あの小さなテレビに"

ラア"それをくれたあの小さなラルドにもね"

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