[通常モード] [URL送信]

long novel
16話
「ヤナギ!!!」

二人は驚きを隠すことができなかった。あの時、時空の狭間に落ちて消えた。あのヤナギが目の前にいるのだ。車椅子に座っている。かわらぬ凍てついた氷のような細い目が恐怖を蘇らせる。

「本当に生きていたのかよ...信じらんねーぜ。オレだってギリギリだったのによ」

祠から出てきたときのことを言っているのだろう。ゴールドはそう呟いた。

「...答えろ。何故今まで姿を現さなかった」

シルバーの質問ももっともである。少なくともジョウトのあのマスクオブアイスの、ヤナギが引き起こした事件からはもう4年の月日が経っていたからだ。

「...私はどこかで君を見たことがあるな、赤髪の少年君。はて?ジョウトの事件?なんのことだ。私は今とても忙しいのだ。ある幻のポケモンを捕らえるためにな」

どういうことだとシルバーは思った。あの時確かにヤナギはセレビィを捕らえ、過去に行き。ラプラス達を見ていたではないか、と。

「やい!ヤナギのじいさん!ボケちまったのかよ?セレビィにはもう会ったじゃねーか」

「無駄口を叩くなゴールド!!!」

このヤナギはおかしい。むやみに情報を与えるべきでないとシルバーは瞬時に判断した。しかし、隣の馬鹿はペラペラとしゃべり続ける。

「何いってんだよシルバー。このじいさん、自分のせいで死んじまったラプラスの親に、自分でかえしたそいつらの子供を会わせてやってんの見てたじゃねーか」

ヤナギの右目が少し開かれる。その眼にシルバーは寒気を覚えた。

「ほう?逃げ出した弟子にここで会えるとはな、シルバー!久しいな。一緒に逃げ出したもうひとりの少女とは仲良く元気にやっているのか?しかし、何故そんなに詳しく私のことを知っているのだ、ゴーグル少年?」

シルバーは頭を抱えたくなった。いや、ゴールドをぶん殴って気絶させてやりたいとも思った。

「はぁ?ヤナギのじいさん、本当に頭大丈夫かよ。オレの名前はゴーグルじゃねえ!ゴールドだ!なんでシルバーを覚えているのに、このオレのことを忘れちまってるんだ!ボケがすすんでいるからってそれは困るぜ」

かなり偉そうに言うゴールド。...ボッコボコに、たこなぐりに、サンドバッグみたいにして、針と糸で口を永遠に縫い合わせて塞いでやりたい。そうシルバーは思った。

「なるほど...あのお方が「ある少年少女達がセレビィのことや私のことを知っている」というのは本当だったのか...しかも、13人の中の3人しかしらないと聞いていたのに...私は運がいい」

ヤナギの両目がカッと開かれる。そして、デリバードとイノムーを繰り出した。シルバーはヤナギがやろうとしていることがわかり、咄嗟にいった。周りには霰が降り続けている。

「ゴールド!バクフーンを出せ!」

「は?命令しなくてもわかってるぜ!んなことは!!!いくぜバクたろう!!!」

そういってバクたろうを繰り出すゴールド。シルバーはキングドラを繰り出した。

「バクたろう!ブラスト「キングドラ、煙幕だ」

辺りに黒い煙が立ち込める。

「は、何やってんだよシルバー前見えねーじゃねぇか!」

「貴様は一回、いや百回、姉さんか、グリーンさんの爪のあかを煎じて飲んだ方がいい。馬鹿過ぎてオレの頭がおかしくなりそうだ」

「な!お前!オレが馬鹿なのは生まれつきだ!」

「なら千回か?何回飲めば馬鹿じゃなくなるんだ?教えてくれ!頼む」

シルバーに突っ掛かっていこうとするゴールド。そして、いつも通りの言い争いに発展してしまった二人。シルバーがせっかく逃げる為にはなった煙幕が雪のまじった風に飛ばされて、無駄になっていく。

「何だゴールド、シルバー逃げようとしていたのか?だが私は君達に尋ねたいことがあるのだ。やすやすと逃がしはしない!」

煙の向こうからヤナギの声が聞こえてくる。

「は?オレは逃げも隠れもしねーぜ!」

挑発にのってしまったゴールド。シルバーはらちがあかない、そう考えたのだろう。ゴールドの腕を掴み、キングドラに指示をだす。

「キングドラもう一回煙幕!ドンカラス!!!」


そういうと上空を飛んでいたドンカラスが下りてくる。ボールにキングドラを戻し、その足に捕まるシルバー。そして、ドンカラスは二人分の重さになんとか堪えながら、全速力で上空へ飛んでいく。

この一連の行程があまりに素早く行われたのでゴールドはされるがままになってしまっていた。

あっというまに空中につく二人。

「...とっととバクフーンをしまったらどうだ、バカゴールド」

確かにあまりに離れてしまうとボールに戻せなくなってしまう。しかも、もうかなり上の方を飛んでいるため、暴れてもし落下したら危険だとわかったのだろう。ゴールドは素直にバクたろうをモンスターボールに戻す。しかし、腑に落ちない、納得がいかなかった。

「なんで逃げるんだよ!あのヤナギは氷タイプ使いだったんだぜ?だからバクたろうがこれから大活躍「貴様は本当にあのヤナギになんの疑問も浮かばなかったのか?」

シルバーがぎろり、と下を向く。ゴールドは若干たじろいだ。

「忘れちまってることだろ?あれくらいの歳になると、ボケが始まっていろいろ忘れだすって「それは絶対にない。あのヤナギはまるでオレたちから何か探ろうとしていた。とくにセレビィのこと、ラプラスのことを貴様が口にしたとき、それは顕著だった。つまり、過去の記憶=ラプラスのことを覚えているということだ。しかもオレを最初見たとき、どこかで見たことがある、そういった。つまり幼いオレをさらったことを覚えてはいたがあまりに月日が経ってしまったせいで、わからなかったということだ。貴様が名前をペラペラと言い触らすという馬鹿をやったせいで結局しられてしまったがな!」

まくし立てるように、シルバーは言う。

「...すみません、シルバーさん話が全く掴めないのですがってか腕がものすごく痛いんですけど...」

てへへといったゴールドを見て、シルバーはそのままこいつを落として、その口を永久に閉ざしてしまってもいいかもしれない、そう思った。が、そんなことを本当にすればクリスが悲しむのは目に見えている。怒りで爆発しそうな自分を押さえ込みながら、言った。

「...単刀直入にいえばあのヤナギは限りなく本物にちかい人物であるが偽物だということだ。記憶が、4年前にジョウトで起こした事件のことがないという点は、不可解だがな」

もちろんまだ仮説の段階、そう付け加えようとしたその時だった。

「偽物!?この私を偽物と言うのか、我が弟子シルバーよ!」

ハッと振り向いた二人。ヤナギが遠くからまるで鬼の形相で飛んでくる。あの車椅子は確か少し空も跳べたんだったっけな、とゴールドは思っていた。

「くっゴールド!オレのモンスターボールからマニューラをだせ!」

「は?んなの無理に決まってんだろ!」

シルバーの右手はドンカラスに捕まっており、左手はゴールドの腕を掴んでいるのだ。たしかにポケモンは出せない。が、ゴールドもシルバーに右腕を捕まれてはいるが、宙ぶらりんのような状態だ。シルバーの腰についているボールからマニューラを出すのはかなり至難の技だった。

「無理でもだ!とっととだせ!今は霰状態なんだぞ!もしこの状態で吹雪をだされれば100%当たってしまうんだ!それがどういう意味が馬鹿な貴様でもわかるだろう?」

最悪、マンたろうのように、カッチコチ。それを思い出したゴールドは必死にマニューラのモンスターボールを探す。

ヤナギはどんどんと近づいてくる。シルバーの腰周りに手をなんとかやり、ボールを手にとろうとするが、むなしくかするだけでとることができない。右腕が捕まれ過ぎたせいで痺れてきている。少し動かすたびに激痛が走る。

もうヤナギはすぐそこまできている。しかし、ボールに手は届かない。まさに絶対絶命だった。

「クッここまでなのか「諦めんじゃねえ!クソシルバー!」

ゴールドの声にはっとするシルバー。ゴールドの手にはモンスターボールが。

「!早くマニューラを出せ!でもって守るだ「んなこと、オレはしねーぜ」

そういうとゴールドは左腕を胸の前におき、そこに自分のポケモンであるピチューをだす。

「は?馬鹿がお前!「馬鹿だぜ、でもこれしか方法がないんだ」

ヤナギはもう目の前だった。口をあけ吹雪と言おうとしている。

ゴールドは力一杯叫んだ。

「ピチュ!そのまんまヤナギに突っ込んでボルテッカーだぁあぁあぁあぁあ!!!」

ピチュがゴールドの胸を蹴り真っ直ぐヤナギに向かっていく。パチパチと火花が、そして爆発が起こる。シルバーは弾みでゴールドの腕を離してしまった。ゆっくりと実際は違うのだが、ゴールドとヤナギが降下していく。まるで時間が静止したように、ゆっくりと。

意識が遠退く中、ゴールドはヤナギのすぐ後ろの方に、ネイティオにつかまったクリスをみたような、そんな気がした。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!