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long novel
13話
ミシロタウンのオダマキ研究所へとろろに乗って向かっていたルビーとサファイア。下を見下ろせば森が生い茂っている。

「さっきはすまんち、ルビー。襟首ば掴んで」

サファイアが重々しくその口を開く。軽率な行為をしてしまった自分を恥じているのであろう。下を向いて、今にも泣き出しそうな顔をしている。

「...気にしてないよ、サファイア。切羽詰まったキミがどういう行動をするのか、ボクはそれはそれはよく知ってるし。それにわかるしね、その気持ちも」

大切な人が、もしこれが今目の前にいる彼女だったら。一瞬、そう考えてしまったルビー。きっと今のように冷静ではいられないだろう。

「ルビーはいつも冷静で、あたしが間違いそうになったとき助けてくれるったい...ありがとう」

そういって微笑むサファイア。不意打ちの笑顔だったので、ルビーは顔が赤くなりそうになる。自分のペースを崩されたくない彼は、ついつい思ってもいないことを口に出してしまった。

「ま、当然だよね。ツタと葉っぱの服ですらない格好で森の中を走り回ってたキミが身につけられるのは、野蛮な行動だけだろうし。冷静ってスキルを身につけられるとは、到底思えないしね!」

「それは...どういう意味ったい...ルビー?」

ゲッとルビーは思った。ここはとろろの上だ。普段なら例え彼女を怒らせてもなんとか逃げ切ることができる。が、何度も言うがここはとろろの上。

つまり上空なのである。

「ルビー」

「はい、なんでしょうか?サファイアさん?」

嫌な汗がドッと吹き出るルビー。目が泳いでいる。こちらに顔を向けていたサファイアの目がカッと開く。そして体の向きをクルリと後ろにかえる。向き合ったルビーとサファイア。そして、そのままルビーの腰を軽々と両手で掴み、頭上に掲げる。

「このまま、こっからおとしても、いいんやね?」

ルビーは5秒くらい前の自分を力いっぱい殴ってやりたい、そう思った。

「サファイア!気を確かに!お願いだから!」

ルビーは泣き出しそうな表情で懇願する。流石にサファイアに限って落とすことはないだろう。が、怖いことにかわりはない。

「ルビー?」

「はい、ごめんなさい。すみません。許して下さいってか本当野蛮だよね、キミ」

「ルビー?」

「すみません。すっごく反省してます。どうかその可愛らしい手でボクの体をとろろの上に優しく、丁寧におろして下さらないでしょうか?サファイア様」

いつも丸め込まれているサファイアが、ある意味ルビーに勝った瞬間であった。しかし、いつまでたってもサファイアはルビーをおろさない。まだ何か気に食わなかったのだろうか。ルビーは本気で泣き出しそうになった。いや、もう目には涙が浮かんでいた。

「...サファイアさん?」

「...ルビー...秘密基地の方が...燃えとる」

「えっ?」

なんとか後ろを見たルビー。が、ルビーはそこまで目がよくない。コンタクトをつけても流石にそんなに遠くまで見えない。サファイアのいっていることが本当なのかわからない。

「本当に燃えているの?」

「うんルビーには見えんの?」

「そんな、キミじゃないんだから...」

サファイアは静かにルビーを下ろした。そして、前を向き、とろろに指示をする。

「秘密基地の方ば向かって!とろろ。全速力でお願いするったい!」

「な!研究所に向かおうよ、せっかくここまできたんだからさ」

正論である。が、自然を愛するサファイアにはそれができなかった。

「確かにエメラルドも心配ったい。でもあれは間違いなく炎ったい!放火とかやったら...もし森に燃え広がってしまったら...」

「あ...」

瞬時にその意味を理解したルビー。

「それに...もし秘密基地が燃えとったらそれはそれで...すごく嫌ったい」

秘密基地。それは幼少期に出会った二人が、再び再会した思い出の場所。そして今まで沢山の思い出を二人で作ってきた場所だ。

なくなっては困る。

「...そうだね、うん、行こう。エメラルドには悪いけど」

「すまんち、エメラルド」

もしここにエメラルド本人がいたらかなり涙目であっただろう。いや、もしくはいちゃつくな!と激を飛ばしたかもしれない。

しかし、異変はこれだけではなかった。さっきまで晴れ渡っていた空がなんと急に曇りだしザァザァと大粒の雨が降り出したのである。

しかし、依然基地の方は炎が燃えていた。

「おかしい...おかし過ぎるったいこれはまるで...」

「うん、ボクにも見えるよ、サファイア。そうまるでこれは...あの時みたいだ...」

秘密基地の方の森はまるでカイオーガ・グラードン事件のときのように日照りになっていて、乾いた草木が発火し、燃えている。しかし、反対側は大雨が降り注いでいた。

「なんで...あの二匹はそれぞれ帰っていったんじゃなか」

「これはあの二匹によるものじゃない。範囲が狭すぎる。あの時はホウエン全体を蝕んだんだ。これはこのあたりの森だけを日照りに、大雨にしている...だから違う。あの二匹が目覚めたんじゃない」

ルビーが冷静にこの現象を考えようとしたその時だった。

「いかにも、これはカイオーガ、グラードンが引き起こしているものではない」
「我々自身がこの力を身につけたのだ」

ハッとルビーは後ろを向く。そこにはアオギリが。そしてサファイアの方にはマツブサがそれぞれ中に浮かんでいた。

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