恋と呼ぶにはまだ早い
06
それなのに、なにがどうしてこんな極悪な性格になってしまったんだろう…
「なぁカス」
「なに」
「俺は寂しいんだ」
幼さが残る甘い顔立ちと、誰もが虜になるであろうその微笑み。
陽光の本性が悪魔だというのは嫌というほど思いしらされているのに、いま私の目の前にいるのは天使かもしれないと、ふとバカなことを考えてしまう。
もしかしたら、悪魔は天使なのかもしれない。
神様に愛されて愛されて愛されすぎた天使は、何だかよく分からないけれど悪魔になってしまったのかもしれない。
そしてそれがこの陽光なんじゃ…
いやでもそれって意味が分からない。
それに天使は名前を呼ばれなかっただけで死刑にするなんて言うわけがない。
やっぱり陽光はただの悪魔だ。
騙されちゃいけない。
「寂しいって、なんで?」
「おまえが最近冷たいから」
「冷たくなんてしてない」
私が陽光に冷たい態度なんて取れるわけがない。
そんなことをしたら瞬殺されるか、ひたすらに調教が始まるに決まってる。
小さな反抗はついついしてしまうけれど、少しでも陽光のバイオレンス行動が始まると私は長年の賜物からか、悲しいことに反射的に従順になり陽光には逆らえなくなる。
本当に悲しいことだ。
「冷たいだろ。今日廊下ですれ違ったのに無視しやがって」
「それは…」
「しかも二回」
「っ!」
ギクッとしてしまった。
二回と聞いて、ギクッと。
それを誰よりも目敏い陽光が見逃すわけない。
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