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恋と呼ぶにはまだ早い
07
「おい理絵、許してやるから牛乳寄越せ」


陽光が唐突にそんなことを言い、りっちゃんはむっとしたように唇を尖らせる。


「瑞波には謝ってない。でも牛乳はあげる。どうせ飲めないから」


「そうかよ」


りっちゃんから牛乳を受けとり新たにストローを挿そうとする陽光を見ていると、当人はそんな私の視線に気づいたらしい。


「なんだその顔」


「え…?」


「ぶっさいく」


馬鹿にしたように笑われてしまう。


自分がどんな顔をしているのかなんて、よく分からない。


ただ、胸にひっかかる。


陽光がりっちゃんを「理絵」って呼んだ。


陽光って、クラスの女の子のこと名前で呼んだりしてたっけ?


私のことは相変わらずカスとしか呼ばなくて、香澄と言ってくれることは本当に稀で。


それなのにりっちゃんのことは理絵って、当たり前のように名前で呼んだ。


だから、きっと慣れていないから、変な感じがするんだろう。


ただそれだけ。


私は自分の中に生まれたよく分からない感情に無理矢理理由をこじつけて抑えることにした。


「牛乳飲めないからそんなにチビなんだろ、おまえ」


「違うもん!牛乳の代わりにヨーグルトとか食べてる」


「まぁ、てめぇの身長なんてこのストローの袋くらいどうでもいいんだけど」


「だったら言わないでよ!瑞波って本当にムカつく」


二人はいつものように喧嘩みたいな言い争いを始める。


りっちゃんと陽光は初めて話したのが1週間前だとは思えないくらいに仲が良いように思える時がある。


私は幼い頃からずっと一緒にいたはずなのに…


二人の距離感の方が近く感じるのは気のせいなのだろうか。


「みぃちゃんもそう思うよね?」


「あ、え?なにが?」


「だから、瑞波ムカつくよねって」


「陽光が?」


「こいつが俺をムカつくなんて言うわけないだろ」


陽光は自信に満ちた表情でりっちゃんにそんなふうに言い返す。


言えないのは当たってるけどさ…


その自信はどこから来ているのだろう。

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