小説 3 「先生、先生、雨都(うきょう)先生〜!! ショップのこの製品が欲しいです〜!!」 バタバタと俺の元にやって来た、同居人兼生徒の狐の擬人化動物、秋雨(あきさめ)。 普段物欲あんのか? って位に物に興味を示さないのに…珍しい。 彼が持ってきた、擬人化動物専門のショップのチラシを覗き込んで見ると。 「これが欲しいんです!!」 「…ぅええぇっ!?」 意外過ぎる代物だった。 3.アルバイト! 「…秋雨や? 本当にこれが欲しいのかね」 「先生? なんで、お爺ちゃん口調なんですか?」 「…心情的に、かな…」 「?」 秋雨が持ってきたチラシの中で指し示した物は。 『ミニ天使の羽』シリーズの黒と『ミニデビルの羽』シリーズの白だった。 一つ四千もする。 それが二つ。 飲んでたカフェオレを危うく吹き出すところだった。 しかも何故それに興味を示したのか、じっくり問い質したい。 しかし見てみたいのも事実。 「秋雨」 「はい」 「仕事で稼ごうな」 「買って良いんですか!?」 頷くと、感極まった秋雨が抱き付いてきた。 だってな、滅多に無い秋雨のおねだりだぞ? 今まで秋雨に着せていたのは、スタンプラリーの景品や、擬人研究所の配給、ショップで見掛けて購入した物ばかりだ。 ………改めて思い出すと、秋雨は本当に物欲が無い。 だが今回は別!! 秋雨の『初めてのおねだり』なのだから張り切らねば! 親馬鹿上等!! 「さて、やれそうな仕事は…」 「公園掃除やります!」 「…三時間ぶっ通しだぞ? 大丈夫か?」 「はい!!」 そういや、ボランティア活動みたいなのが好きなんだったな。 本人が「良い」っつってんだから大丈夫だろう。 「戻りました〜!! 先生、アルバイトって楽しいですね!!」 戻ってきた秋雨は、かなりイイ笑顔だった。 色んな人に声を掛けて貰ったらしく、他の擬人化動物とも交流が広がったようだ。 自身の必死の頑張りで、秋雨は所望の品を手に入れ、すっかりご満悦である。 公園掃除も気に入ってしまって、この仕事も楽しんで行っているようだ。 しかし、万事OKという訳にもいかない。 この後も細々と、小さいものから大きなものまでトラブルに巻き込まれる俺たちなのだった。 '11.12.01 [*前へ] |