小説 Happy Birthday.(海賊:ウソ愛) 大事な仲間の大事な日。 盛大に祝おうじゃないか!! 朝。 早起きのブルックの音楽で目覚める。 ふと、今日はやけに優しい音色の曲だったなと思ったが、こんな日もあるのだろう。 今日は何をしようか。ルフィ達と魚釣りも良いし、ウソップ工房で新しい武器を考えても良い。 いつも通りの筈だったのだ。 馬鹿な海賊狩りが襲って来るまでは。 「いっでェ!!」 「ウソップ!?」 叫び声をあげたウソップを見ると左腕から血を流していた。 「だ―――っ!! 今日はウソップの誕生日だってのに!!」 「………へ?」 「許さねェぞ、てめぇら!!」 船長がそう叫ぶなり。 「ゴムゴムのガトリング!!」 「刻蹄ロゼオミチェーリ!!」 「七十二煩悩鳳!!」 「サンダーボルト=テンポ!!」 「エクストラアッシ!!」 「ドスフルールクラッチ!!」 「ウエポンズレフト!!」 「ガボットボンナバン!!」 ウソップと親友ともいえるルフィとチョッパーがまずキレ、それに他の船員が続いた。 しかも全員、全力全開である。 怪我をしたウソップは呆然と、どこからともなく鈴を出し、チーンと鳴らしながら馬鹿な海賊狩りを少し哀れに思ったのだった。 チョッパーに手当てをして貰っている間中、代わる代わる様子を見に来る仲間達に、ウソップは申し訳なく思ってしまっていた。 「うぅ………情けねェ」 「ウソップ、暫く左腕使っちゃ駄目だからな!」 「うぅ〜………」 船医のお達しである。 食事はなんとかなりそうだが、戦闘に出れない。 ネガティブ思考のウソップは、ウソップ工房でどん底まで凹んでいた。 夕方。 ルフィとチョッパーが、満面の笑みでウソップを呼びに来た。 凹んでいたウソップは何が何だかわからず、二人に促されるままダイニングへ連れていかれる。 『誕生日おめでとうウソップ!!』 仲間達の祝辞に、凹んでいた気分が吹っ飛んだ。 大きなケーキに豪華な食事。 思わず涙を溢したウソップに、仲間達は気に入らなかっただろうかと焦る。 「違う、違うんだ………ありがとう皆」 嬉しいんだ。 その台詞が終わった途端、バースデーパーティーが宴会になった。 プレゼントがない代わりにと。 ブルックの音楽で皆が歌い踊り、ばか騒ぎをする。 「ありがとうな、皆」 小さく呟く声は宴の喧騒に消されたが、ウソップは満足だった。 誕生日、おめでとう いつか、勇敢な海の戦士になれるまで。いつまでも皆と居たい。ワガママかな? '11.04.02 1日遅れた……… [*前へ] |