小説 It is dear.(バカテス:康明) 嬉しいんだ。 君と居られる事が。 「ムッツリーニ〜、帰ろ〜」 明久が康太を呼ぶ。 何時もなら、雄二と秀吉も加わるのだが。 雄二は翔子と共に(引きずられるように)既に帰宅、秀吉は今日は部活だった。 二人っきり。 皆に秘密で付き合いだして、初めてじゃなかろうか。 その事実に気付いた明久の頬が、徐々に緩んでいく。 「……? 明久?」 いつの間にか、俯いてしまっていたらしい。 康太の声に慌てて我に返るも、時既に遅し。 心配症な恋人を、誤魔化すなんて出来やしない。 「あのね」 嬉しそうな明久に、康太はホッとする。 なみいる恋敵達を退けて、明久の恋人の座を手にいれた。 なんでも背負い込んでしまう、大事な大事な可愛い恋人。 「………なに?」 「嬉しいんだぁ、二人っきりだから」 ふにゃりとした笑顔と、飾り気のない言葉。 康太は鼻血が出そうになるのを瞬間的に抑える。 (……明久、可愛い過ぎ…) 流石、明久。 男女問わずの人気は、伊達じゃない。 その事実を知らないのは本人だけだ。その上、天然タラシ。 (………萌え死ぬ………) 「ムッツリーニ?」 「………俺も、嬉しい………」 内心悶えながら、平静を装って、本心を告げる。 すると明久は、数回瞳を瞬いて、それはそれはこの上無く幸せそうに笑うのだ。 康太も嬉しくて微笑み、恥ずかしいながらも、壊れ物を扱うようにそっと手を繋ぐ。 ねぇ、好きだよ。 ずうっと。 君だけが、好き。 恋しくて 君が恋しくて、たまらない。 [*前へ][次へ#] |