小説 Garden where positive is hit.(灰男:クロミラ)NL.リア友リク こんなに天気の好い日は。 あの人を誘って、お茶にしよう。 その日、ミランダ・ロットーは非番であり、大したドジもなく、そして天気はすこぶる良好だった。 (……こんなに好い日は無いわ。そうだ、中庭のテラスでお茶なんてどうかしら) ミランダは何だか嬉しくなって、軽やかに食堂へ向かう。 (………確か、昨日戻ったのよね…お誘いしたら、迷惑かしら………) 初めて出来た恋人を想う。 凄く優しい、人。 不幸女の私なんかには、勿体ない程の、優しすぎる人。 アレイスター・クロウリーV世。 私の大事な大事な大時計を、素敵だと言ってくれた人。 私のドジを、慌てなくて良いからと微笑んで、手を差し伸べてくれた人。 (………私、幸せだわ……) 愛しい人に、優しい友人。 (………不幸女は返上ね) 嘗て、不幸女と故郷で悪戯半分に歌われていた事が懐かしい。 それもこれも、年下の友人たちのお陰。 彼等と出会っていなければ、今の幸せは無かっただろう。 愛しい彼とも、出逢えなかった。 自分達は、エクソシストだから。 だからこそ。 (お仕事もあって。大好きな人達が居て。幸せすぎて死んじゃいそうだわ) 教団にやって来るまでの出来事を振り返り、ミランダはしみじみと思うのだ。 その頃、ミランダの恋人であるクロウリーは、今回の任務のパートナーであるアレンと別れて、自室に向かっていた。 AKUMA絡みではあったが、イノセンスは無かった。 一般人に被害が無くて良かった。戦闘後に二人で笑い合った。 (……お茶が飲みたいである……ミランダと一緒に) こんな事を本人に言ったら、卒倒しそうだ。 ミランダ・ロットー。 仲間であり、恋人。 儚いようでいて、その実、頑固な部分がある。 何をやっても駄目だと言いながら諦めない姿勢が好ましい。 いつも何かに怯えているような彼女を、守りたいと思ったのが切っ掛けだったのだ。 (………アレンとラビに感謝しなくては、である) あのまま城に残っていたら? きっと世界を知らない儘だった。 バケモノと、恐れられ続けられた筈だった。 それが今はどうだ。 城の外は、美しくも醜い事を知った。 愛しい彼女とも出会えなかった。 初めて愛した、AKUMAのエリアーデとはまた違う、愛しさ。 バケモノと呼ばれた、もう一人の自分を見ても受け入れてくれた。 ミランダ。 彼女の全てが愛しい。 (ミランダに逢いたい) そう思った矢先。 「く、クロウリーさん」 振り返ると、愛しい彼女がティーセットを持って、クロウリーの所まで来ようとしていた。 「どうしたであるか?」 「あの、その、クロウリーさんとお茶がしたくて、その………」 ミランダの言わんとする所をはっきりと理解したクロウリーは、彼女が持つティーセットをやんわりと取り上げた。 「ミランダ。ありがとうである」 いきなり御礼を言われたミランダはぽかんとした。 だってそれは、自分が言うべき台詞だったから。 「丁度、お茶が飲みたかったのである。ありがとうである、ミランダ」 にっこりと微笑み付きで再度礼を言われ、ミランダは今度は真っ赤になった。 「わわ、私、あの、そそそそのあの、外で、お茶を」 「外? ああ、中庭のテラスであるか。では一緒に」 行こう、と誘われて、ミランダはおずおずと頷いた。 中庭で行われる、和やかな二人だけのお茶会。 ゆっくりと時間が過ぎていく。 なんて幸せ。 陽の当たる庭 愛する人と過ごす一時は、何物にも変えがたい [*前へ][次へ#] |