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誓いの日
誓いの日 F

「…お前には仕置きが必要だ」

そう言って唇の端を吊り上げて冷ややかに笑うネジ様に、ゾクりと背筋が泡立った。
『誤解です、私はただ…』
本当はそう言ってしまいたかった。
何故おかしな態度になってしまったのか、話してしまえば楽になったのだろうけど…
でもそれは羞恥を伴うものであり、どうしても言い出すことが出来なかった。


噛みつくような口付け。
息をつく間も無いほどに荒々しく唇を奪われ、思うまま口内を弄られて、まるで蹂躙されているかのようなその行為に、初めはただ恐ろしさを感じていた。
でも…
次第に体の芯が痺れ、やがて全身がとろけてしまう様な甘美さとなって四肢の力を奪っていく。
経験したことのない未知の感覚。


その未知の感覚からやっと解放された唇を喘がせ、荒い息をつきながら力の入らぬ体を引きずり後ずさる私を、ネジ様はまるで獲物を狩る獰猛な獣のように、じりじりと壁際まで追い詰めた。

「お止めください…ネジ様…」

囁いて、残酷な笑みを浮かべる凛々しい顔を見上げれば、私の中で交錯する二つの思い。
それは…
始めてみる雄の香りを放つネジ様の荒々しい姿に怖れを抱く思いと、反面、このまま服従してしまいたいと言う相反するものだった。
今のネジ様の冷酷な程の美しさは、あらがいがたい何かを放っている。
それが、私の中に眠っている本能を呼び覚ましてしまったのか…
相反する思いは、後者の方が明らかに勝っていると、認めないわけには行かなくなってきていた。


追い詰められ、妖しい光を宿した黒い瞳に射ぬかれて、それでもなけなしの理性をかき集め、あらがう様に小さく首を振る。
けれど、そんな抵抗など何の意味も持たなかった。
グイと腰に巻き付けられたネジ様の腕が、力の抜けた私の体をいとも簡単に抱き寄せる。

「お前の力など取るに足らん」

再び荒々しく唇を奪われ、恥ずかしくなるぐらい淫靡な水音が、神聖な空気で満たされていたはずの室内を淫らに塗り変えて行く…
唇を離し、低く忍び笑いを漏らすネジ様の温かな吐息が耳元を掠めただけで、びくりと体が震えた。

「あっ…」
「どうした?」
「あぁ…っ!」

反応を窺って面白そうに囁き耳朶を甘噛みするその行為に、ツンと全身を貫く快感を与えられ、反射的に淫らで鋭い声が口をついて出ていた。
自分の口から漏れ出しているとは信じられないぐらい、妖艶な声。

刹那、

『このまま奪われてしまいたい…』

淫らで抗い難い誘惑に、最後の理性が押し流されて行くのを感じた。

「くくっ…いやらしい顔だな桃香」
「っ……」

羞恥を煽る言葉でなぶられても、それすらが甘美な感覚となって体中を痺れさせる…

「…ネジ…様…」

切なさで潤んだ目で、ネジ様を見上げた。

「どうして欲しい?」

そう問われても、なにも答えられなかった。
捕らえられた腰をさらにぐっと引き寄せられ、しなる背中。
それを支えて力強く引きつけるネジ様の掌が、やがてゆっくりと背筋を撫で始め、あまりの心地よさに全身に鳥肌がたつ。


「…ネジ様…ネジ様っ…」

ぎゅっと目を閉じ、夢見心地で繰り返し呟いていた。

そして…

体がぐらりと傾き、背中に感じたひんやりとした感触。
ゆっくりと目を開ければ、真上から見下ろすネジ様の顔。
気がつけば私は、ひんやりとした畳の上に横たえられていた…


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