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誓いの日
誓いの日 C
一体…ナルトのこの浮かれようは何なんだ…

傍らでキバと共にバカ騒ぎしている金髪を、俺は思わず小突いていた。

「いってぇっ!何するんだってばよ」

今にもキバにつかみかかろうと身を乗り出していたナルトは、後頭部を押さえながら不満そうに振り返った。

「ふん…お前が余りに騒がしいから窘めただけだ」
冷たく言って、ピンと額を弾いてやる。
いてえ!!と大袈裟に痛がるナルトをしり目に、辺りを見渡すと、そう広くもない室内のあちらこちらに数人ずつ人の輪が出来ていて、皆それぞれに違う話題で話し込んでいるようだ。
そうかと思えば片隅に酔いつぶれて寝込んでいる者や、もっと酒を持って来いとお付きの者を困らせている者もいる。

「おいこら!シズネっ!私の酒がないぞ!」

叫んで酒瓶をドンとテーブルに置いた女傑に目を向ければ、そこでは寸劇さながらなやり取りが繰り広げられている。
恐ろしいほどに目も据わり、着物の合わせも乱れきっている里の長の姿は、冷静沈着で通っている俺でさえ、思わず目をそらしたくなる。

「アワワ…つっ綱手様!もうその辺にしておかれた方が…明日の公務にも差し障りが…」
「うるさいっ!お前は小姑みたいにいつもいつもっ!え〜い、こうしてやるっ!」
「あひ〜〜〜っ」

一生懸命宥めようとする腹心のくのいちに、盛大な頭突きを食らわせる様子は、もうただのごろつきとしか思えん…
本当に頭が痛くなる。
自分のために設けられた宴席とは言え、ここまでばらけてしまえば、正直もうお開きにして欲しいのが本心だ。
はぁ…
と、気だるい気分もそのままに、思わず大きく息をついた。
こうなれば誰も俺の溜め息など気づきはしないだろうと踏んでの事ではあったが。
だから、

「どうしたのだネジ。随分と大きな溜め息をついたものだな」

いきなり横からまどろっこしい独特の口調で言われ、正直驚いた。
振り返るといつの間に側に来ていたのか、隅で酔いつぶれていた筈のシノが、サングラス越しに俺をじっと見つめていた。

「…いや…すまん。」

言葉少なにそう答え、手元に残っていた杯を一気に空ける。
喉元をカッと熱い液体が過ぎて行くと、血液が一瞬にして速度をあげ、体内を駆け巡る。
やはり酒は体に良くない…
うっかりすればチャクラの流れも乱される。
内心舌打ちし、空になった杯を膳の端へと押しやった。
酒は成人してからもう何度も口にはしているが、ただの一度も美味いと思ったことはなかった。

「苛ついているのだなネジ。蟲が恐れてざわついている」

意外に鋭い奴だとは承知しているが、今日のこの男はしつこさも持ち合わせているようだ。
表情の読めない男の顔をチラリと視界の端でとらえ、いつものように鼻で笑ってやり過ごそうと思ったのだが、随分と鬱陶しい視線を送ってきている事に嫌気がさし、逆に正面から向き直って見返した。
「…何が言いたい?」
感情を宿さない声で問いかけ、普通の人間なら居心地の悪さを感じるぐらいの無表情で見つめてやる。
だが…
やはりこの男にこれは効き目がないようだ。

「…気になっているのだろう。奥方の事が。随分と我慢しているものだな、ネジ」
「……………………」

何とも畏れを知らない男だ。
自分で言うのも何だが、この里で1、2を争う程の堅物の俺に、こうも簡単に女の話を振ってくるとは。
しかしそれは間違いではなかった。
実のところ、途中退席した桃香の事が気になっていたのだ。
だからと言ってそんな事はおくびにも出さずにいたはずだ。
この日向ネジが、どこかの気の小さい夫達のように、家内の事を心配して宴席中やきもきしているなど、そんな里のゴシップになるような話題を、むざむざ提供してやるつもりなど、毛頭無い。

「ふん…くだらん。」

冷たく言い放ち、目に映った杯へと手を伸ばす。
が、それはついさっき空にしてしまった物であることに気づいた。
逐一シノに見られていることを意識し、伸ばした手をどうしたものかと一瞬ためらったその時。

「ネジってばよ、む〜りしちゃってぇ」

バシッと背中を叩かれ、むっとして声の主を見やれば、そこには同期組や若手の忍達がニヤニヤしながら集まってきていた。



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