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誓いの日
誓いの日 A
火影様をはじめ、ネジ様のお仲間にお集まりいただいて粛々と執り行われた婚儀。
縁あって木の葉隠れの里に身を寄せ、火影様の計らいでこの日向の分家にネジ様の許嫁として住まうようになって1年が過ぎた今日、この良き日を迎えた…
旧家ならではのしきたりに乗っ取り、静粛な雰囲気の中で執り行われた式は、これからネジ様と共に生きて行く事の幸せだけではなく、日向家の為に果たさなければならない責務をひしひしとこの身に感じた。
これからはますます日向の嫁として恥じぬよう生きていかなければならないのだ。
決意も新たにし、式に継いで催された宴の席についた。
しかし…
たった今新たにした決意は、早くも崩れてしまう事となった。
宴が盛り上がるにつれて緊張続きだった私の体調は、気持ちとは裏腹にどんどん下降し始めた。
皆様のお酒も進み宴も酣となった頃には、頭痛が酷座っているのもやっとな程になっていた。
それでも、ここで中座などしたら宴に水をさしてしまう、ネジ様にご迷惑をかけてしまう…
その強い思いから、
酷くなっていく頭痛や倦怠感にも耐え、努めて笑顔で何事もないように振る舞っていたつもりだった。
傍らにいるネジ様に気づかれはしないかと、内心ビクビクしながら。
でもそんな私の心配をよそに、ネジ様は、
数々の困難を共に乗り越えられてきたお仲間の冗談の渦に巻き込まれながら、楽しく過ごされているご様子だった。
チラリと横顔を盗み見、無愛想に見えて実は楽しそうにされている事が伺える、ネジ様のちょっとしたお顔の変化に気づき、これなら体調の変化もうまく隠し通せるかもしれないと安堵した。
しかし数分後、
そんな私の観察眼など、まったくもって甘い物なのだと思い知ることになる。
一瞬顔を伏せ、
「ほぅ…」
と小さく息をつき、目をつぶったその時だった…

『桃香、どうした?』

唐突にそう問われ、はっとして隣を振り仰ぐと、そこには微かに眉根を寄せてジッと私を見詰める、心配そうなネジ様のお顔があった。
そうだった…
この方の前で一瞬でも気を抜いてしまえば、なにもかも直ぐに見抜かれてしまうのだ。
いや、そもそも忍としても優秀なネジ様の鋭い観察眼の前で、ただの素人の私が何かを隠し通すことなど、始めから無理な話だったのだ。

『具合が悪いのか?』

気遣わしげに問われ、
苦い後悔の念を抱きつつも慌てて微笑みを作り、
『いいえ』
と首を振ってみたのだけれど、そんな事、ネジ様に通用するわけがなかった。

『無理はするな…先に部屋へ戻っていろ。』

有無を言わせぬ強い口調に、でも…と言いかけた私をネジ様は片手を上げて制し、お側に居られた本家の御頭首のヒアシ様に何やら耳打ちされた。
その数秒の出来事が、どれほど長く感じたことだろう…
ヒアシ様は一瞬眉を顰められ、息を潜めて見守る私をチラリと御覧になった。
それからネジ様へと軽く頷かれると、出席者の皆様に向かい、私が体調不良の為先に退席することをお伝えになった。
一瞬静まり返ってしまった室内。
一身に集まる視線…
情けなさに涙が滲みそうになるのを必死にこらえ、ネジ様に背を支えられながら周囲の心配声に見送られ、その場を後にした。

私を部屋まで送り届けると、ネジ様は、

『先に休んでいていい…』

一言そう言い置いて、再び宴席へと戻られ、一人取り残された私は暫しぼんやりと立ち尽くし、気がつくとその場に崩れるように座り込んでいた。


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