明日になったら忘れてあげる (ラプンツェルの長い髪、それがあればあの男ははたして追って来てくれるだろうか) 眼下に広がる深い森。 ぐるるる、わおーん、獣たちの遠吠えが夜に響く。 「庭に果てが見えないって、ありなわけ?」 独り言を呟いたあと、ベランダの手摺に肘をつき、果てのない庭と夜を見つめる。 ああ、今日は三日月なんだ。 空に漂うそれはあの男を連想される。 「ヒソカの、ばーか」 返事は勿論ない。 月もにやにや笑うだけ。 「すきですきで、 どうしようってくらい好き。でもね、受入れかたが、わからないんだ」 「それでも、ヒソカ は」 「追いかけてきて くれますか?」 (すき、なんだ) 本人の前ではけして言えない告白。ああ、憶病者の私にピストルを。 その時だった。突然にょきっと手摺の下から白い手が生えて来たのだ。 「うひゃわっ!」 きゅ、きゅーきゅうたろー、ですか?!おばけのQちゃんですか?! 実は幽霊とかオカルトとかが苦手な私は震える。 がっ。もう一本手が生えて手摺を握った。そうして下からだんだんと登ってきたのは_ 「やぁ ご機嫌いかがかい?ラプンツェル」 にやにや笑いの持ち主 ヒソカであった。 「いつから、いたの…っ!」 まさかずっと私の恥ずかしい告白中、ベランダの下で待機していたんじゃ…! あれを聞かれていたかと思うと顔が熱を持つ。火がでそうな勢いだ。 「ええっと『庭に果てが見えないって、ありなわけ?』くらいからかな?」 「よーするに最初からじゃん!!」 やっぱり待機してやがったな! 「くくくっ 何の話だい? ねぇボクに何か言いたい事あるんじゃないのかい?」 ああ、あれを聞いておいてまだ言わせたいの?(このサディスト!) 「あのさ ヒ、ソカ」 「なんだい?」 「ッ…さっきの全部嘘っぱちだから、ね!」 「 あァ この期におよんでまだ意地をはるのかい?」 「素直な私なんて、かわいくないでしょ?」 「そんなことないけど…しょうがないねぇ」 (ラプンツェルの助けも魔女の助言もいらない。追いかけて追いかけて 自分の力でラプンツェルを手にいれてみせる) 明日になったら忘れてあげる 「だから、今だけは素直になってくれないかい?」 「べーだ!」 (長期戦は、覚悟の上さ!どこまでも追いかけてあげる) [*前へ][次へ#] |