a man with a double character ≪ 屋上に響き渡るボイスレコーダーから流れる美乱の声。 それは、数々の私に対して言った暴言や脅しだった。 「これは…美乱の声……だよな?」 「嘘だろ!?」 皆すごく動揺してる。 仕方ないよね。 だって、跡部達は美乱を信じていたんだもの。 「なぁ、美乱!嘘だよな!?」 「……っ。」 美乱は顔を歪めていた。 まだ、自分の負けることを認めていない様子だ。 「…みん、な……皆!!騙されないでぇ!!あれは…美乱が……美乱が彗歌に脅されたの!!」 焦っているのがバレバレだよ。 だけど、油断は出来ない。 「…っ、そうですよ!美乱さんは脅されたんです!!」 鳳がそう言うと皆は動揺しながらも、それに同意した。 きっと、このボイスレコーダーの声は演技じゃないと薄々感じていてもそれを認めるのが怖いんだと思う。 でも、美乱に負けてはいけないんだ。 私は何か言おうと口を開けた。 だけど、私が声を出すより先に声が聞こえた。 「見苦しいで……美乱。」 え? あれは… 『忍足?』 忍足が松葉杖を使いながら立っていた。 その横には滝君がいる。 「滝!お前今まで居ないと思ってたら…。」 「ごめん宍戸。だけど忍足から校門にいるって電話で言われてさ。ここまで連れてくるのに苦労したよ。」 滝君…だからいなかったのか。 だけど、忍足の意識が戻って本当に良かった。 「侑士!!?起きたのか!!大丈夫か!?」 「ああ、大丈夫や岳人。せやから包帯の上から叩くのやめてぇな…いたいねん。」 「あ、わりぃ。」 向日はすごく嬉しそうに言っていた。 やっぱり、忍足と仲が良かったからすごく嬉しいんだと思う。 「岳人。喜んでくれるのは嬉いんやけど今は後や。……皆、よう聞きぃや!」 皆の目線が忍足に集まる。 美乱は忍足が来ることを完全に予測していなかったらしい。 目が泳いでいた。 「俺をリンチしたのは彗歌じゃない。美乱が用意した男どもや。」 「なっ!マジ…なのか?」 忍足の言葉を聞いた皆は一斉に美乱に問いかけていた。 うつ向いているから表情はよくわからないけど、悔しそうに体を震わせている。 ………これで…。 『…終わったんだよね?』 私は美乱に勝ったんだよね。 やった…。 「彗歌!!」 『わっ!ジロー!!』 ジローが抱きついてきてよろけそうになりながらもなんとか倒れずにいれた。 「やった!!これで彗歌のいじめは無くなるCー!!」 「やりましたね!!」 「一時はどうなるかと思ったがな…。」 「ボイスレコーダーを持ってきてたなんて、やるねー。」 皆のおかげで、真実を伝えられた。 とっても嬉い! 『ありがとう…本当にありがとう!!』 『よかったね、彗歌。』 雛歌のおかげだよ。 本当にありがとう。 『フフっ、あの女の悔しがる姿が見れたし僕もうれしいよ。』 早く皆と和解したい。 そう思い、跡部達のところに向かおうとした。 だけど、私は見てしまった。 美乱がニヤリと笑うところを…。 え? 美乱ばかり見ていたから気がつかなかった。 給水塔の裏から人が出てきたのを。 そして、私の真後ろにあるフェンスのネジが… 取れていることに。 ドンッ ending…結末 [*前へ] [戻る] |