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a man with a double character

 










浮いている。





私の体は落ちようとしているんだ。







そう気づいた時にはもう私の足はフェンスを超えていた。


スローモーションのようにゆっくりと時間が流れているように感じる。







美乱の笑い声が聞こえる。







皆が私を呼ぶ声が聞こえる。








「ごめん」って聞こえる。








ああ、真実をちゃんとわかってくれたんだね…。













彗歌!!!









ガシッ







僕はとっさに彗歌から意識を奪い、なんとか捕まれそうなところに捕まった。


上を向くと女の顔が見えた。



明花



明花はニヤニヤと気持ち悪く笑っている。



「あはは、あははははははははははは!!ざまぁーみろ!!!言っただろ!!あんたは幸せにはさせないってねぇ!!あははははは!!!」



気持ち悪い。




あいつは恐らく給水塔の裏に最初から隠れていたんだろう。


美乱の指示で。



まんまとやられた。



美乱が鳳に彗歌を追わせたのも屋上におびき寄せるためだ。

多分鳳に屋上に向かわせるよう言っていたんだろう。



早く気づいていれば…。



美乱の目的は作戦を失敗させることとか、追い詰めてリンチにするとかそう言うのじゃない。



彗歌を殺すことが目的だった。





くそ…



くそっ!!







上から聞こえる美乱と明花の笑い声がすごく耳障りだ。



「彗歌!!」



ジローが僕を上に引き上げようと手を伸ばしていた。


だけど、僕がいるところには届かない。





もう…腕が限界だ。




だけど、絶対に生きなきゃ。


彗歌を死なせない。


死なせ…












もう、大丈夫だよ。













え?



彗歌…。













雛歌、もう大丈夫だよ。




もう、無理しなくていいよ。





私はもう十分だから。





皆が真実をわかってくれた。





それだけで十分だから。












だからもう…













彗歌は半分だけ意識を僕から取り戻し、掴んでいる方の手を…





離した。















落ちる。












落ちる。















落ちた瞬間、手を伸ばしていたジローの顔が絶望へと変わった。








ああ、そんな顔しないで…。










私は…僕は…









精一杯の




心からの




笑顔で言った。












『ありがとう。』



















そして、雛歌。











ごめんね。









生きるって約束したのに…。










本当にごめんね。











そして、ありがとう。












雛歌。











いや
























お姉ちゃん。




















 

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