a man with a double character
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『ハァ……ハァ……。』
私が走り続けて着いた場所は屋上だった。
どうしよう…逃げ場所がない。
「追い詰めましたよ…。」
鳳は私と少し距離を取っていた。
多分私が雛歌になるのを警戒しているんだと思う。
まぁ、鳳には私が急に強くなったように見えるのだろうけど…。
『…鳳。』
「湖空先輩。あなたは美乱さんを傷つけすぎました。だから俺はあなたを許しません。」
『…っ。』
鳳は急に私と距離を縮めてきた。
そして、私を殴ろうと腕を挙げた。
バンッ!!
「彗歌!!」
屋上のドアを開ける音が聞こえた。
そして、私を呼ぶ声も。
それが鳳の拳を止めた。
『…宍戸。』
それは宍戸だった。
「彗歌!大丈夫??」
『ジローまで!それに…日吉!』
「間に合ってよかったです。」
宍戸の後ろにジローと日吉も来ていた。
『なんで…?』
「長太郎が美乱に話しかけられて何処かに行くのが見えてな。追ってみたら彗歌が追いかけられるし…。」
三人とも…来てくれたんだ。
あの様子だと作戦失敗は察しているようだ。
「早くここから離れるぞ!」
『え?』
「湖空先輩が逃げているところを見ていたのは俺達だけじゃありません。」
「跡部達が来るCー!!」
跡部達も?
……いや、これは好都合かもしれない。
『……大丈夫。』
さっきの私は取り乱しすぎた。
美乱に計画がバレていたことに動揺してしまった。
だけど、皆が来てくれたから…私はもう大丈夫。
『もう…もう逃げないよ。』
『そうだよ、彗歌。僕達は逃げていたってしょうがない。』
『…鳳。皆が来るまで今はお互い何もしないでおこう。』
「……そうですね。」
鳳は人数的に不利だと考えたようだ。
かなり予定は狂ったけど…でも、まだ証明する手が無くなったわけじゃない。
これで、終わらせる。
私はポケットに入っているボイスレコーダーを強く握った。
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