a man with a double character
∇
私は窓を除きながら部室に誰もいなくなるのを待っていた。
まだ部員が数人残ってる。
無意識に手が震える。
大丈夫…大丈夫。
きっと上手くいく。
自分にそう言い聞かせていた。
だけど、そんな考えが甘かった。
「何やってるんですか?」
『っ!!』
部室に気を取られて近づいているのに気がつかなかった。
しかも、鳳だ。
『なんで…ここに…?』
「それはこっちの台詞です。美乱さんにあなたがここに行くのが見えたと聞いて…。」
『え?』
美乱が私を…?
じゃあ、私が動き出した時にはもう…
美乱が…来ていた?
「…湖空先輩。あなたはまた美乱さんを傷つけるつもりですか?」
ヤバイ…どうしよう。
逃げなくちゃ…。
今の鳳に何を言っても無駄だ。
完全に美乱の虜になっている。
『っ!』
「!!…っ待て!!」
私はとっさに走り出した。
不意をついたのか鳳は一瞬反応できなかったようだが、すぐに私を追いかけてきた。
どうしよう…。
美乱が居た?
でも私がコート整備をしてるときは誰も来ていなかった。
だから、私が隠れにいくのは見れないハズだ。
だけど、わかってた。
え…、じゃあ私が皆と部室に居た時…つまり8時30分前には来ていたってこと?
じゃあ、コート整備の時に言ったあの作戦も聞かれていたんじゃ…。
『…そん…なっ!!』
私は無我夢中で走った。
鳳に何度か捕まりそうになったけど、それでも必死に走った。
作戦がバレた…。
それがショックだった。
私は逃げることしかできなかった。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!