a man with a double character
∠
あのあと、三人をどうにか保健室まで運び部活にも行かずに早退した。
三人には色々と言われたが全部無視をした。
彗歌の心はこの数日でボロボロだ。
だから、僕が全てを終わらす。
明日、必ず。
家に着くと何も言わずにリビングに行った。
そこには案の定母がいた。
たが、泣いていた。
母は僕が早く帰ってきたことに驚いたのか目を見開きこちらを見てきた。
「あ…おかえり…。」
『……ただいま。』
母は気まずそうに顔を俯かせ…そして、ゆっくりと話し出した。
「ねぇ、彗歌。私貴方に酷いこと…したわよね……。ごめんなさい。」
『……。』
今度は僕が目を見開き、耳を疑った。
こいつが謝った?
彗歌に死ねと言ったこいつが?
彗歌を傷つけたこいつが?
彗歌を殺そうとしたこいつが?
「ごめんなさい、こんな母親で…ごめんなさい。」
『………はぁ?』
これはこれは…。
なんということだ。
『…なぁ、母よ。彗歌がどれだけ傷ついたかわかる?』
「…え?」
母は瞳を揺らがせ僕を見ていた。
まるで、許してもらえると思っていたかのように。
いや、許してもらえる前提だったのだ。
図々しいにも程がある。
『母よ。あんたは彗歌を傷つけた。あんたは殺そうとした。…ごめんなさい?それで許してもらえるとでも思ったの?』
「……あ…あなた…本当に彗歌…なの?」
『何?自分の娘も解らなくなったの?』
ああ、この人は本当に酷い人間だ。
自分の娘すら疑うのか。
まぁ、ある意味間違ってはいないけどね。
「彗歌は…そんなこと…言わないわ。…彗歌は……私を傷つけたりしない!!誰!?誰なのよぉ!!!」
『雛歌。』
「………え?」
僕は自分の名を言った。
僕の名前を。
「雛歌?雛歌なわけないじゃない!!あなたは彗歌よ!…そうよね?ね?」
無表情のまま母に近づく。
頭を抱えて誰と連呼する姿は滑稽だ。
『母よ。僕は雛歌だ。』
「違う!!」
『認めろよ。あんたが捨てた娘のことを。』
捨てた娘を思い出せよ。
その後僕は泣き叫ぶ母を見下し、そして自室に戻った。
明日が決戦だ…。
明日が終わりだよ。
Lynch …リンチ
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