a man with a double character
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「あんた全く動かないけど…やる気あるの?それとも戦意喪失で死ぬ気にでもなった?」
美乱はしばらくケータイを弄ると突然そう言ってきた。
まぁ、美乱には私がなにもしていないように見えるのかもしれないね…。
『…死ぬ気はないよ。戦意喪失もしてない。』
「ふーん。まぁ、いいわ。どうせあんたの命も明日で終わるしね。」
美乱は私をひと睨みするとドリンクを持って行ってしまった。
『………。』
朝練で美乱は何もしてこなかった。
それはそれでいいんだけど…なんだか美乱が不気味で…そして……いつもよりも怖かった。
『大丈夫、あいつは明日終わる。さっきの会話だって撮ったんだしね。』
…そうだよね。
『だけど…今日美乱がなにもしてこないわけがない。まぁ、僕は許してないけど…あいつらは…クラスは安全…多分仕掛けてくるのは…。』
放課後。
その考えの甘さに後悔することになるなんて…今の私には…いや、今の私達には知るよしもなかった。
「彗歌。…今日はなにもされてないよね!?」
『ジロー心配してくれてありがとう。』
味方になってくれてからジローと宍戸、そして日吉とお弁当を屋上で食べている。
前まではテニス部全員で食べていたんだけどね。
でも、みんなで一緒にお弁当を食べられる日も近いのも確か。
『みんな、私は明日で全てを終わらせる。だから…協力してくれる?』
「勿論だ!」
「協力するC〜。」
「わかりました。それで、なにか作戦でもあるんですか?」
『うん。…作戦って言ってもとってもシンプルなことだけどね。』
私はあらかじめ持ってきていたボイスレコーダーとビデオカメラを出した。
そして、みんなにそれを見せた。
『これは、部室で起こった美乱と私の映像…そして、美乱とのやり取りが録音されているんだ。』
「いつの間に…。」
『これを明日みんなに見せる。明日は休日だから一日中練習だよね。…だから、明日の10時にこれを聞かせる。私は部室で準備するからその間に部室には誰も入らせないようにして…10時になったら部室につれてきてほしいの。』
「スクリーンでも出すんですか?」
『うん、跡部と私しかテニス部では出し方しらないしね。』
テニス部にはビデオカメラで撮った試合を見るためのスクリーンが部室に設置してある。
そのスクリーンは普段は邪魔にならないようにしているため、上にに巻かれていて、ボタンを押さないと出てこない仕組みになっている。
そのボタンが何処にあるのかをテニス部では私と跡部しか知らないのだ。
「わかりました。」
「まかせとけよ!」
「俺ら頑張るC〜!」
『……ありがとう。』
私には頼りになる仲間がいる…そして…目を覚まさせたい仲間がいる。
それに、私のせいで傷ついてしまった忍足のためにも…私は勝たなくちゃ。
…明日は負けられない。
「……あっ、いた……彗歌!」
『え?』
突然背後から声が聞こえた。
同じクラスで私と仲のいい友達の加原明花だった。
「これを…彗歌に届けてほしいって…言われて…。」
『…誰に?』
「……湖崎さん。」
美乱が?
渡されたのは手紙だった。
内容をみてみると、女子らしい字で『今すぐに裏庭に一人で来て。』と書いてあった。
これは罠?
『わかった…届けてくれてありがとう。』
「うん…。」
行ってみよう…これが罠だとしても…私が傷ついても…。
これが証拠になるなら。
「彗歌!まさか行く気じゃ…。」
『…大丈夫、なんかあったら直ぐに逃げるし。』
「でも…。」
『大丈夫だって!私を信じて。』
私はみんなを一人一人見た。
私の覚悟を感じ取って欲しいから。
「……わかった。」
宍戸がそう言うとみんな頷いてくれた。
『ありがとう。』
「ヤバくなったら直ぐに逃げろよ。」
『うん!行ってきます。』
私は直ぐに手紙の場所に向かった。
その時、明花が笑ったのにも気付かずに…。
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