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アナ聖伝
01



「うわー!!すごい!」

リューイはフリードの屋上で身を乗り出して歓声を上げた。



朝起きてみるとすでに陸が見えていた。




はじめは海の上に線が乗っかっているようにしか見えなかったが、次第に陸地がはっきりと見えてきた。


リューイは最初こそ部屋の窓で見ていたが、そのうち待ちきれなくなって屋上に飛び出した。



クレイブはリューイのはしゃぎように最初はため息をついていたが一緒に屋上に来ていた。



「クレイブ。あそこが町??」

リューイの指差す方向にはいくつも煙突が並び煙が出ている。



クレイブはそれを見てうなずいた。


リューイは興奮してクレイブに話しかける。


「あんなにたくさんの煙突みたことない!」

「船大工の町だからな。あそこに行くだけで船の修理に必要なものはほとんどそろえる事が出来るんだ。」

「すごい!!まだ着かないのかな!」


リューイは待ちきれないと言った様子で身を乗り出して眺めている。



しばらくしてゆっくり船は港に入った。





港と言ってもフリードのほうが遥かに大きいので、港から少し離れたところに停泊した。

水上艇でリューイ達ヴァリウスのメンバーとレストが港に向かう。


そこには白髪頭の老人が立っていた。





老人はレストのほうにスタスタと歩いてくると口を開いた。



「久しぶりじゃのレスト。これがお前さんの船か?」


老人の言葉にレストはうなずいた。


「ええ。ガルさん。連絡したとおり修理をお願いしたいのですが…。」



ガルと呼ばれた老人はレストより10歳以上年上のようだ。

思ったよりも小柄で背丈はレストよりも小さかった。




「そうさな。うちの若い衆に船を見させてくれ。話はその後じゃ。」

老人はあごに手を当てながら答えた。





「それから例の件なんですが…。」

レストが言葉を濁す。それを聞いてガルは口の端をあげた。



「そっちはわしが見よう。お前もそのためにここにきたんじゃろうて。」


ガルの言うことに、レストは敵わないという風に手を上げた。



ガルはしばらく無言でフリードを眺めた。

そしてゆっくり口を開く。



「お前さんがこんな立派な船を持つとはの…。ジンとあちこち飛び回っていたころには考えられんことじゃ。」

ジンという言葉にリューイの体がピクンと反応した。



「おじいさん。父を…ジンをご存知なんですか?」

突然話しかけてきたリューイにガルは目を丸くした。


しかし、リューイの真剣な顔を見るとレストが説明しようとするのを制してリューイのほうにゆっくり歩いてきた。




「娘さん。君はジンの娘かね?」




リューイはゆっくりうなずいた。

「はい。ジンの子リューイと申します。父の事をご存知なのですか?」


リューイの言葉にガルは目を細めてうなずいた。

「ああ。ジンとそこのレストは古くからの友人じゃ。こいつらがまだ若くて、ワルをやっていたころからな。」

ガルの話している奥でレストが照れくさそうにそっぽを向いている。


「ところででジンは元気かね。いつのころじゃったか船をおりたと聞いたが…。」

その問いにリューイはゆっくりと答える。



「父は…亡くなりました。つい先日です。」




ガルは一瞬驚いた表情をしたが、目を細めると懐かしむ様につぶやいた。



「そうか…、惜しい男を亡くしたの。」

そしてリューイの顔をじっと見つめる。



「お前さんの目はジンのそれにそっくりじゃ。頑固だが力強い目をしておる。また後でゆっくり話をしてあげよう。」



そこまで言うとリューイににっこりと笑いかけレストのほうに向き直った。



「お前さんたち、何人くらいここに降りる気じゃ?」

「おそらくここにいるメンバーと調理場のメンバーかと。人数は最小限にするつもりです。」

レストの答えにガルはうなずいた。



「そのほうが良いじゃろ。ここらいったいの山が最近雪解けをしたんで、今はあちらこちらから人間が出入りしておる。中にはフィースの民もいるからの。お前さんたちの制服もあまり見せないほうが良いと思うが。学校の旅行かなんかだと思わせておきなさい。」

レストはうなずいた。



ガルという人物はかなりの物知りのようだ。

レストでさえ口を出せずにただうなずくだけになっている。



「それじゃ始めるかの。」

ガルはレストの方をポンポンと叩くと町のほうにスタスタと歩いていった。




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