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アナ聖伝
04



リューイは鎮静剤が効いたのかよく寝ている。

クレイブは一人でリビングに座っていた。




ピロロロロ〜。




不意に電話が鳴る。

リューイを起こさないように静かに受話器を取った。




「レストです。クレイブですか?リューイは?」

電話の相手はレストだった。




「はい。リューイは今寝ています。トイが言うには傷はさほどひどくないようです。ええ。」

クレイブはレストの電話に答えながら報告を進めていく。



「それでリューイの様子は?」

「寝ている間にだいぶうなされていました。また夢を見ていたようです。…見た目には変わらず見えますが。少しおびえています。」

「そうですか。あんなことの後ですから、しょうがないですね。明日には起き上がれそうですか?」

「動けなくは無いと思いますが…。何かさせるおつもりですか。」




クレイブは少し渋った。




あんな事件の後だ。

出来るだけ休ませておきたい。

いつもと違うリューイの様子も気になった。





クレイブのその様子に気づいたのか、レストの声が少し軽くなった。


「今回の事件のことで皆さんとお話しておかなければいけないと思っています。そのためにはリューイにも出席してもらいたいのです。」




確かにレストの言うとおりである。

今回の事件は不可解な点が多かった。

何かあるにしても、無いにしても一度は話しておく必要があるだろう。

話すだけなら体にも負担は少ないし、大丈夫だろう。



「わかりました。今は休んでいるので目を覚ましたら話してみます。」

「お願いします。それから…。」

ひと呼吸おいてレストは続けた。





「クレイブ、あなたはそろそろヴァリウスに復帰できますか?」




ついに来たか―。





クレイブもそろそろだとは思っていたが、レストの声にゆっくり目を閉じた。

今回の件のこともあって上から話が出たのだろう。

レストがまだクレイブを動かしたくなかったのは電話の声で分かる。




しかし、いつまでも何もせずにいるわけには行かない。




クレイブにとってヴァリウスのメンバーでいることが自分の存在意義であり、過去への罪滅ぼしだった。





「分かりました。詳しい内容は明日聞かせてください。」





一瞬リューイの顔が頭をよぎるが、それを振り払うようにクレイブは答えた。

「助かります。では明日。」




受話器を置くとクレイブはソファに座って深いため息をついた。

体を折り曲げるように、ひざに額をつけた。

ヴァリウスへの復帰が自分をここまで迷わせるとは思っていなかった。

なぜ迷ったのかも分からなかった。




もう一人の自分が蔑むように、クレイブを見下ろしている。





分かっていたはずだ。なぜ躊躇する。

お前は許されていない。許されてはいけない。

もう忘れたのか?あのことを。




「忘れてなんかいない…。」

クレイブは消え入りそうな小さな声でつぶやいた。




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あきゅろす。
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