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『勝手に決めないでよね!』
プリプリと怒りながら、まだ新しいローファーへ足を入れた。
「たまにはぃぃでしょ?
蜜香可愛いんだし、そろそろ彼氏作ってもぃぃんじゃない?
もぉ、大丈夫だよ、きっと。」
最後の一言に、グラウンドへ向けられた足が止まる。
寂しそうな光の声。
『あのコトが気になってるわけじゃないから。
心配しすぎだよ?
哲にぃのトコ、行こ?』
"あのコト"
忘れる訳ない。
苦しかった、あの時を…
地元では有名な野球部とあって、見学者はたくさんいた。
丸刈りで真っ黒に焼けた肌。
緊張した面もちで、練習を見つめる人たち。
その横には、熱いエールを送る女子集団。
練習の邪魔になるとか考えないのか。
すると、横にいた光がその集団に向かって歩いていった。
光がキレたら手に負えない。
止めなくてはと思った時、その集団の前に1人の男の子が現れた。
「応援してくれるのは嬉しいんだけど、今は練習中。
悪いけど帰ってもらえるかな?」
185センチの長身、太く筋肉のついた腕、土で汚れたユニフォーム。
真剣な目でそんなコトを言われ、女の子達は気まずそうにその場を後にした。
「兄貴!」
そぉ、彼が光の大好きなお兄さんなのです。
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