10
「――…谷口サン、行くよ?」
『えっ…あ。
皆は?』
気付けば、目の前を夏樹クンの手がゆらゆらしている。
周りには私たち2人しかいない。
「もぉ行ったよ?
また妄想の世界入っちゃった?」
ニヤニヤと夏樹クンにからかわれているのはわかるのに、言い返す気にもならない。
それでは夏樹クンに心配かけちゃうだけだってわかっているのに…
頭の中は、蒼のことばかり。
どぉしたって消せない。
「心配しなくても、本当に寝坊しただけだって。」
夏樹クンが気を使ってくれても、スッキリとしない。
初めて、自分から蒼に会いに行ってみようと思った。
会ってくれないのなら、私から会いに行こう…
.
◇back*
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!