4 少し夏樹クンの表情が揺らいだのが気になったけれど、電車の到着に意識を奪われ、聞く機会を失ってしまった。 「ちょうどラッシュの時間だったね…」 電車の中は、サラリーマンが押し込まれた箱のようになっている。 いつもは混む時間を避けていたから、こんなの久しぶりだ。 「どぉする? 時間遅らそうか?」 心配そうに聞く夏樹クンの顔が蒼と重なり、胸がズキズキ疼き始める。 『私は平気だよ! 夏樹クンこそ大丈夫? 何かごめんね。』 あの後だから、本当は空いている電車に乗りたかった。 男の人の体に触れるのは怖いし、不安もある。 だけど、心配をかけたくはないから。 . ◇back*◇next# [戻る] |